「子持ち様への冷笑」かつて経験した私が思うこと 男性の育休取得率が3割到達の陰で生じる歪みの正体

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子どもを持つ男性の働き方の変化を容認する姿勢や、そのための仕組み作りが欠けていると、男性が育児に育休中以外は満足に参画できませんし、結果的に性別役割がさらに固定化してしまう恐れがあります。

こうして男性の育児参画が「短期間限定」で終わってしまうのであれば、そもそも政府が男性の育休を推進する意味あいは、大きく薄れてしまいます。

こうした男性たちの働き方、現状が改善するよう、何らかのメスを入れる必要があると考えます。合わせて、育休を含めた男性のキャリア中断に対する社会的包摂も求められます。

「子持ち様」バッシングの不穏

最近、「子持ち様」という言葉をよく耳にするようになりました。子どもを持つ親が育休をはじめ、時短勤務やフレックス、在宅勤務などでそもそも優遇されていることを揶揄するだけでなく、子どもの発熱などで退社した後、仕事を急に振られることを不公平に感じ、不満に思う人たちが捉えた表現です。個人的には、何とも複雑な思いにさせられる言葉です。

「子持ち」「子無し」がそれぞれの側に立って、相手を攻撃するような社会は健全とは言えません。「会社で、あんな言われ方をするぐらいなら、子どもは欲しくない」という思いに駆られる人も出てくるでしょう。それでは少子化に拍車がかかりかねません。子どもを持ちながら働くという人たちが、特権階級的で特別な人たちと受け止められるようでは、お互いが生きづらくなること必至です。

確かに、病気や介護など誰にでも起こり得る事象と異なって、人それぞれに様々な事情や背景を抱える中、子育ては誰しもが経験できることではありません。そのため、ひょっとすれば、嫉妬に近い感情が渦巻いているのかもしれません。

働き盛りの「子持ち」「子無し」の当事者ばかりに任せるのでなく、当事者ではない人たちが、真摯に取り組む姿勢が必要です。分断が本格化する前に、企業や組織・団体は、双方がお互いを尊重しながら、公平さを担保するための働き方の構築に向け、早急に手を打つことが求められるのではないでしょうか。

小西 一禎 ジャーナリスト

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こにし・かずよし / Kazuyoshi Konishi

1972年生まれ。慶應義塾大卒業後、共同通信社入社。2005年より政治部で首相官邸や自民党、外務省など担当。2017年、妻の米国赴任に伴い会社の休職制度を男性で初取得、妻・二児と渡米。2020年、休職期間満期で退社。コロンビア大東アジア研究所客員研究員を歴任。駐在員の夫「駐夫」として多数の寄稿。「世界に広がる駐夫・主夫友の会」代表。著書に『猪木道~政治家・アントニオ猪木 未来に伝える闘魂の全真実~』『妻に稼がれる夫のジレンマ』など。専門はキャリア形成やジェンダー、海外生活・育児、政治等。

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