ディストピア化?シンガポールの食が凄いことに 食料自給改善へ都市国家が取り組んでいること
シンガポールは2020年に、人工的に育てられた「培養肉」の商業販売を認可した世界初の国となった(アメリカは2年後にこれに続いたが、フロリダ州は5月に培養肉の製造・販売を禁止した)。
それ以来、空気から合成されたタンパク質が豊富な粉末や、動物細胞を必要としない培養肉の調合法といった未来を先取りする製品にも許可が与えられてきた。
「シンガポール(で認可される)以前は、培養肉は完全にSFの世界のものだった」。フーバーズの培養肉販売を支援するイートジャストの共同創業者、ジョシュ・テトリックはそう話す。
それゆえに、シンガポールが何らかの成功を成し遂げれば、それは世界的に重要な意味を持つ可能性がある。
課題はバカ高い生産コスト
だが、多くの専門家にとって培養肉は、従来の肉に取って代わり、畜産業が排出する温室効果ガスを削減することで気候変動を抑える、という期待に応えるものにはなっていない。
フーバーズで販売されたクォーターポンド(約113グラム)の培養肉に付けられていた7.20シンガポールドル(約800円)という値札が、いかに生産費用が高いかを物語っている。
「私たちの現在地点と目標地点の間には、規模の拡大という巨大な問題が存在しているが、こうした規模拡大の課題を克服できる保証はない」とテトリックは言う。
そうした理由もあって、培養肉のスタートアップ企業に対する新たな資金供給は停滞しつつある。
一般消費者への販売が開始される前のシンガポールでは、培養肉はフーバーズ内のレストランでしか入手できなかった。2023年1月からフーバーズは、フライドポテト、ミックスグリーンサラダの付いたサンドイッチと、春野菜のオレキエッテといったパスタ料理の販売を開始。どちらも価格は18.50シンガポールドルで、イートジャストの子会社であるグッドミートから多額の資金援助を受けていた。