【実験】「肉じゃが」今と昔のレシピで作った結果 ひたすら強火で料理する時短レシピはどちら?

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尚氏のレシピで作った際は、肉がボロボロになった。しかしこの方法なら、現代の超薄切り肉でもソボロ化しにくい。上田氏のレシピには「牛肉は火通りが速いので、かたくならないよう直接鍋に触れさせずに火を通す。牛肉のうまみを野菜にしみ込ませる目的も」と注釈がある。つまり、肉の旨味を野菜に移す方法は1つではない。

肉を上に被せてみた(編集部撮影)

ジャガイモが大ぶりなのが気になっていたが、ちゃんと「ホックホク」に仕上がりジャガイモの存在感が強い仕上がりになった。肉の旨味も確かに野菜へ移っている。ホックホクに仕上がった理由は、肉を上に載せて蒸し焼き状態にしたこと、ふたをしたことと思われる。

全体的に薄味の、いわゆる「優しい味」。編集者は口にしてすぐ「こっちのほうが好み」と断言した。肉じゃがは濃い味が好みな私は、少しだけみりんと醤油が多くてもいいなと思った。

現代のレシピでつくった肉じゃが。肉はしっかりと残っている(撮影:尾形 文繁)

今は火を止めて調味料を加えるレシピが多い

火を止め調味料を加える方法は、現代のレシピでは多い。平成以降、火を恐れる台所の担い手が増えたようで、フライパンはフッ素加工で、調味料をあらかじめ合わせてまとめて投入する、調味料を入れる際に加熱しないレシピは多い。

油が跳ねる、あるいは焦げ付かせるのが怖い、という現代の台所の担い手には、尚氏のレシピはおすすめしづらいが、おいしくする工程を省きがちな一般的な時短レシピと違い、素材を生かすための手早さなので、手順通り作れば食べ手の評価も高くなりそうだ。

手順や材料も、そして味つけも時代の違いを感じさせる。そして意外にも最初から完成度の高いレシピが提案されていた。肉じゃがが定着したのは、栄養バランスもよく、そして日本人好みの甘辛味という完成度の高さによるのかもしれない。

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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