「自分と相手は別々の人間なのだとわかっていること、です。パートナーへの思いやりは必要ですが、あくまで違う人間です。コントロールされたくはありません」
千恵さんは自身もわがままなところがあると自己分析するが、それを客観視して抑える自制心がある。面と向かった相手への気遣いもできる。
「隆志さんとの2回目のデートで代々木公園を散歩することを提案したのは私です。レストランで向かい合って話すとお互いに緊張してしまい、芯を食った話ができないと思いました」
散歩しながら忌憚なく話し合い、隆志さんは「この人で大丈夫だ」と判断。「結婚前提のお付き合いをしてくれませんか」という硬派な告白に至った。恋愛経験が豊富ではないからこそ駆け引きをしなかったのかもしれない。モテていた過去とは決別して本気の婚活に臨んでいた千恵さんの答えはもちろんYES。現在の結婚生活に至る。
“同行二人”で模索し続ける
最近、55平米の2人用一戸建てを買って一緒にローンを返済中だ。財布は共通のものを含めて3つ。小遣いはそれぞれ月3万円だ。結婚したての頃は子どもが欲しかったが、これから不妊治療をするつもりはない。2人きりのささやかな暮らしをともに慈しんでいる。
年に2、3回は軽い夫婦喧嘩があると明かす千恵さん。原因はすべて自分だ。一度も怒らず常にテンションが変わらない隆志さんのなにげない言動に「なんでそんなこと言うの!?」と突っかかってしまうことがある。体調が悪かったりすると神経が過敏になりやすいと自覚している。
「でも、これ以上の暴言はいけないというラインは守っているつもりです。以前と比べると、自分の機嫌をとれるようになったと思います」
スマートに見える千恵さんと隆志さん。実際にはそれぞれに大きく欠けた部分がある。親から受けた傷だとしても、大人になったら受け止めるしかない。
千恵さんと隆志さんは人生経験を重ねる中で欠点を少しずつ客観視し、自分も周囲も穏やかに過ごせる道を探してきた。これからも模索し続けるのだろう。
かつては一人きりの修業の旅だったが、今は心強い相棒がいる。インタビュー取材後、「このあと隆志さんの両親と4人でランチをするけれど、親密な会話は期待できない」と苦笑いをしていた2人を思い出し、“同行二人”という言葉が頭に浮かんだ。
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