「私には自分で仕事や生活を楽しくするエネルギーはありません。だから環境を変えてみようと思って転職をして、社会人の交流パーティーにも参加してみました」
転職先で隆志さんは管理系の業務に向いている自分を見出す。そこで専門性を磨き、現在は4つ目の転職先で精力的に働いている。
「交流パーティーのほうはあまり楽しめませんでした。私は知らない人といろいろ話すよりも、一人で部屋の中でじっとしているほうが好きです。小説を読んだり映画を見たりして過ごしています」
苦い経験を経て学んだ、相手を選ぶ際の「柱」
国内での一人旅行も楽しんでいたと振り返る隆志さん。しかし、あるときに寂しさを覚え始める。
「何のために仕事を頑張っているのかなと考え始めました。自分のためだけに生きるのはしんどいな、パートナーという目的が欲しいなと気づいたんです」
この発見は千恵さんのそれと似ている。しかし、恋愛経験のない隆志さんがマッチングアプリという玉石混交の場で良きパートナーに出会うには3年という歳月が必要だった。出会いの数が少なかったわけではない。自分にはどんな相手が必要なのかという視点が欠けていたからだ。
「いくつかのアプリを試し、20人ぐらいとは会ったと思います。『いいね』をしたりされたりしていましたが、実際には何が良くて悪いのかはわかっていませんでした」
36歳のとき、「いいね」をしてくれた3歳年下の女性と交際が始まりそうになった。可愛らしい外見の人だったが、「女王様気質」だったと隆志さんは指摘する。
「男性から楽しませてもらって当然、という人でした。私はせっかく選んでもらったのだからと頑張っていたのですが、彼女からはまったく優しくしてもらえず疲れるばかり。このままではコントロールされてしまう気がして、3カ月で見切りをつけました」
隆志さんの話を聞いていた千恵さんがたまらずに口をはさんだ。その女性は20代の終わりまですごくモテてきたはず、と千恵さんは推測する。30歳を過ぎて自分をチヤホヤしていた男性たちが結婚してしまい、急に焦ってアプリを始め、スペック的に「悪くない」隆志さんを落としどころだと考えた。しかし、もともと上から目線なので隆志さんから一方的にサービスされることが当然だと思い込み、それに呆れた隆志さんからもフラれてしまったのだ、と。やや意地悪い分析だが、当たっているかもしれない。
この苦い経験で隆志さんが学んだことがある。相手を楽しませることも大事だけど、自分も幸せにならないと意味がない、と。そして、相手を選ぶ際の「柱」ができた。
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