「35歳ぐらいからずっと婚活をしていたけれどなかなかうまくいかず、大宮さんの連載を読んで『こういう成婚ケースもあるんだな』と励まされていたんです。勇気を出して(連載の取材先として)応募することにしました。私みたいな者でもようやく結婚できたので、独身で婚活中の方の勇気づけになれば幸いです」
謙虚な応募理由を話してくれるのは銀行員の田島涼子さん(仮名、45歳)。首都圏で夫の達也さん(仮名、48歳)と2歳の息子と3人で暮らしている。子どもが生まれてから1年間ほどは体調が優れずにイライラしていたが、ようやく穏やかに過ごせているという。苦労の多かった婚活と不妊治療について、今なら明るく振り返られると感じての応募だ。
人付き合いが苦手だと自覚している涼子さん。国立大学の理系学部に在籍していた頃は周囲の男性から「ちやほやされた」記憶もあるが、ずっと一緒にいたいとは思えなかった。恋人がいた経験はないが、「そのうち結婚するのだろう」と思い続けていた。
「20代後半のときに銀行に転職しました。働きやすい職場でとてもラッキーだったと思っていますが、同年代の男性は既婚者ばかり。好きな人すらできずに30歳を過ぎてしまいました」
瞬発力が求められる合コンや婚活パーティーではまったく成果が出ず、焦燥感に駆られて大手の結婚相談所に登録したのが38歳のとき。倹約家の涼子さんは「一番安いプラン」を選択した。
入会金は3万円で月会費は1万円。お見合い料や成婚料はゼロ。担当カウンセラーはプロフィールを作成してくれるだけでフォローやアドバイスはほとんどしない。危険度の低いマッチングアプリのようなものだ。男性経験のない涼子さんに向いている婚活手段とは言えない。案の定と言うべきか、涼子さんは「成婚退会をした相手から突然フラれる」という手痛い経験をしている。
相手は1歳年上の物静かな公務員だった。お見合いから3回目で真剣交際を申し込まれ、条件的には問題ないので受諾すると、すぐに「親に話した。会わせたい」と言われた。とにかく結婚を急いでいる様子で、涼子さんは気持ちがまったく追いつかなかった。
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