トランプ再選なら窮地「ウクライナ」の行く末 日本のウクライナ政策も再考が必要か

✎ 1〜 ✎ 8 ✎ 9 ✎ 10 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

現在のロシアのように軍事的に優勢な側が不利な交渉に応じる可能性は低い。ウクライナがプーチンの示した条件を丸呑みすることができれば話は別だが、先のとおり、ウクライナ政治は分裂しつつある。交渉の席につくのはゼレンスキーではなく、別の人物である可能性も十分ある。ロシアはゼレンスキーに代わるウクライナの代表が現れるまで、軍事行動を停止しないだろう。

トランプがそうしたプーチンの思惑や立場を考慮するかどうかは別としても、トランプ政権下でアメリカからのウクライナ支援が縮小するか失われるという見込みが固まるだけで、ゼレンスキー政権を崩壊させるのに十分な要因となるだろう。プーチン大統領からすれば、軍事行動を着々と進めながら、その時期を待てばよいのである。

ロシアは、ヨーロッパ諸国や人々がロシアに対して今以上に強烈な反発を抱くことがないように注意しつつ、軍事行動を進めるだけでよい。ウクライナは事あるごとにロシアの非道性をヨーロッパの人々に印象付けようとするだろうが、それにも限界がある。

パレスチナ紛争のあまりの非人道性がウクライナ紛争の印象を薄めてしまっているということもある。基本的にロシア軍は前線での軍事行動を基本としており、爆撃も軍事施設やインフラを標的としている。非戦闘地域への爆撃を頻繁に行っているわけではない。

日本がNATOとの関係を深める影響

こうした中、岸田文雄首相は7月11日にワシントンで開催されたNATO首脳会議にパートナー国として出席し、イギリス、フィンランド、スウェーデンなどのNATO加盟国と首脳会談を行った。NATOは日韓豪ニュージーランドをインド太平洋パートナー(IP4)と呼び、協力を深めようとしているのだ。

日本にとって、NATOとの協力深化は、遠くの国と結んで近くの国(中露)に対抗するという「遠交近攻策」に他ならない。しかし実際には、ハンガリーなどに見られるように、西側諸国によるロシア包囲網は穴だらけである。

実際、NATO首脳会議に伴って発出されたウクライナ支援のための「ウクライナ・コンパクト」という政治文書があるが、ここにはNATO加盟国であるハンガリーやスロバキア、ブルガリア、トルコなどが名を連ねておらず、参加したのはNATO加盟32カ国のうち23カ国である。なお、IP4のうちでここに参加しているのは日本のみである。

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事