午前中は「ガッツリ仕事」を避けて過ごすべし 朝の「ゴールデンタイム」に本当にすべきこと

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ですから、午前中はとにかく下手に成果や結果を求めることなく、自分の身体と心の中に「流れ」が生じるように、インプットとアウトプットの間を循環することに集中する。そうすると、だんだんと心身に、力強い「流れ」が生じてくるんです。

午前中の僕は、はたからみるとぼやーっとしている時間も長く、怠けているようにも見えるかもしれない。でも、この時間帯にしっかり「パイプ掃除」をやっているからこそ、午後からの時間にがんばって仕事ができるのはもちろん、数カ月、数年単位で見たときには、アイデアや発想、あるいは新しいことに取り組んでいこうというモチベーションが枯渇せずに済んでいます。少なくとも、僕自身はその効果を確信しています。

クリエイティブなアイデアや斬新な発想、あるいは身体の奥底から湧いてくるやる気やモチベーションといったものは、実は自分の中から生み出すことができないものです。それは感覚的にいうと必ず、私たちの身体の「外側」からやってくる。自分の外側にある「泉」にアクセスできないかぎり、僕らのアイデアも、発想力も、活力も、すべてはいつか、枯渇してしまうのです。

最高のコンディションだからできること

僕らの外側で渾々と沸き続ける泉の水は枯れることはありません。しかし、パイプが詰まってしまえば、僕らはせっかくの泉にアクセスできなくなってしまう。感受性が最大限に解放される午前中に、時間をかけてパイプ掃除をしておくこと。それは、僕らが「泉」にアクセスし続けるために必要な、ひとつの儀式のようなものだといっていいでしょう。

大げさではなく、僕にとっては朝の時間をこのように過ごすことができていることによって、どれほど忙しくなっても、どれほど毎日のように講演や講義をやっていても、話すネタが尽きる、ということがないんです。

もしもこれが、「朝10時から打ち合わせや収録が入る」ということが当たり前の状態で仕事を続けていたら、とっくの昔に、僕の頭から新たなアイデアや新鮮なモチベーションは消え去ってしまっていたことでしょう。

しっかりと深い睡眠を取って目覚めた午前中の心身は、最高のコンディションにあります。その最高のコンディションのときにやるべきことは、目の前の雑務を片付けることではありません。自分の身体の外側にある想像の泉にアクセスするという、もっとも大切なミッションに、最高の状態の心身を使って欲しいのです。

午後、あるいは夜の心身は、多くの場合疲れ果てています。疲れがたまった心身でいくら考えても、その思考は同じところをぐるぐると循環するだけで、決して新たな考えが降りてくることはありません。

午前中はできるかぎり一人で過ごし、インプットとアウトプットの循環を促すような活動に時間を使う。一見無駄なように見えて、そのことは長期的に見たときに、あなたの人生の時間をより充実したものにしてくれるはずです。

 
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名越 康文 精神科医

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なこし やすふみ / Yasufumi Nakoshi

1960年、奈良県生まれ。精神科医。専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現:大阪府立精神医療センター)にて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、99年に同病院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。
著書に『心がフッと軽くなる「瞬間の心理学」』(角川SSコミュニケーションズ、2010)、『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)などがある。
夜間飛行よりメールマガジン「生きるための対話」刊行中。オフィシャルウェブサイトはこちら。twitterはこちら

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