夏野・ホリエモン、「激烈な報酬格差は当然だ」 「WORK RULES!」刊行記念"働き方"対談
堀江:まあ1万倍になったら、報酬が払える会社って、ソフトバンクぐらいしかないかもしれない。普通は株ですよね。
動かない人が経営者になるという問題
夏野:グーグルがすごいのは、人材採用も事業のバウンダリーも完全に区切るし、自由に設定している。だからもう、「えっ? そんなところにグーグルが行くの?」みたいなことがあるし、それを怖がってない。普通じゃ自分の領域と関係ないところに出ていくのにためらうけれど、出ていくときには採用して人がそろっているから。
さっきの自分より優秀な人を採れって、当然、その分野に関しては優秀なわけでしょう。でも、すべてにおいて優秀かどうかわからない。少なくとも車の事業をやるならその分野に精通している人とか、マップ事業も、アンドロイドもそう。携帯のOSをやっている会社を買収して、その会社の社長のアンディ・ルービンさんをそのまま連れてきた。彼は自分のやりたいことが見つかったから、グーグルを辞めちゃった。それでいい。だから強い。
今の日本の企業が悩んでいることは、すべてグーグルが自分で解決している。だから、この本を読めばいいんですよね。しかし、日本の組織の問題点は、読んで、「そうだよな。うん。やっぱそうすべきだよな」と言って翌日会社に行くとすっかり忘れている(笑)。
堀江:僕も「今すぐやれることからやってください」って言うんですが、しつこく言っても100人に1人か2人。僕は「サロン」というのを実験の場的にやっていて、600人の会員がいますが、1人1万円ずつ払って僕の話を聞いたり、夏野さんにもゲストで来ていただいて。実際にアクティブに行動している人は、この中の10%ぐらいでしょう。
夏野:問題はたぶん米国でも一緒ですよ。そういうビジネスってたくさんあるから。ただ日本の場合は、動かない人のほうから経営者が出ちゃう。リーダーは何かやらないといけない。オバマ大統領は任期が満了に近づいてきたときにキューバの問題にあたった。自分の任期中に何かを残したいからでしょう。日本の経営者はそんなこと思わないから、順調に相談役になって、顧問になって、などと考えている。
堀江:それは、なかなか難しいものがあって。先日あるベンチャー企業で、世界的にものすごいマーケットを取れる技術を持っている会社の社長に会ったのです。そこは大手メーカーが50%を持っている子会社。社長は55歳ぐらいで、自分でやる最後のビジネスだと思って取り組んでいて、ビジネスモデルがエクセレント。非常に優秀な経営者でもある。なのに、全然、株を持ってないのです。
「うちのファンドで50億円出します。MBOして、あなたも株を持ってもっと主体的にスピードアップして、その50億円使ってバンプアップできます。もっと追加出資してもいい。この事業はそれだけのポテンシャルがあります」と言ったけれど、断ってきたのです。やっぱり均等にVCとかメーカーにとかがよかったのかな。