アップルが創業した当時、若いスティーブ・ジョブズを支える経営人材として、マイク・マークラ(元インテル幹部)を紹介し、成長資金を供給したのは、セコイア・キャピタルという名門ベンチャーキャピタルですし、日本では、DeNAの創業時に、日本テクノロジーベンチャーパートナーズの村口和孝氏が、会社立ち上げのノウハウ提供と資金供給をし、会社の危機において冷静なアドバイスをしたという話がよく知られています(南場智子『不格好経営』参照)。
ベンチャーキャピタル業界に吹く新しい風
このベンチャーキャピタル業界に、近年大きな変化が起きています。
もともと、日本のベンチャーキャピタルは、米国と異なり、銀行や証券会社、保険会社など大手企業の子会社が多く、親会社からの出向者が投資を担当し、数年のうちに人事異動で交替するため、企業を目利きし支援する力が十分ではないと言われていました。
しかし、ライブドアショックとリーマンショックを機に、多くの大手企業系キャピタルが、ベンチャー投資から撤退し、独立系のキャピタルの活動が主流となってきました。その数も増え、近年では100億円を超える規模のファンドを組成し、活発に投資する独立系キャピタルも出てきました。
グロービス・キャピタル・パートナーズ(堀義人代表)は、その代表格で、ITベンチャーへの投資を中心に業界を牽引しています。インキュベイトファンド(赤浦徹代表)は、創業間もないベンチャーの育成で力を発揮しています。東京大学エッジキャピタル(郷治友孝社長)は、大学発ベンチャーの成功例を増やしています。
また、近年は、30代前半の若手キャピタリストが出始めていることも明るい話題です。リクルートで新事業の立ち上げをした後、ベンチャーキャピタル業界に転身した佐俣アンリ氏や、大和SMBCキャピタル(現大和企業投資)で経験を積んで独立した木下慶彦氏のような若手の活躍に期待が集まっています。
そして、これらの独立系キャピタルの活躍は、大手の系列のキャピタルの投資行動にも影響を与え、相互がうまく連携して投資をするパターンも出ています。さらに、経済の好況を受けて、大企業の新事業への挑戦への意欲が高まり、事業会社が新事業分野のベンチャーに戦略的に投資するコーポレートベンチャーキャピタルを立ち上げるなど、新しいプレーヤーが増えています。
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