BOPビジネスの正しい進め方《第1回》--小分け袋の販売がBOPビジネスではない
最近、「BOPビジネス」という言葉を一般的なビジネスの話の中でよく聞くようになった。BOPは「Bottom of the Pyramid」もしくは「Base of the Pyramid」の略で、所得別人口構成の「ピラミッドの底辺」を指し、貧困層のことを意味する。
年間所得3000ドル未満の収入で生活する人々は世界に約40億人いるといわれており、その割合は世界人口の7割にも上る。BOP層の40億人の総収入を足していくと、50兆ドルになり、これは日本の実質国内総生産に匹敵する。
今まで企業が相手にしてこなかった貧困層であっても、集めてみればこれまで考えもしない大きな市場になるという認識が、日本のビジネス界に急速に広がっている。「最後の巨大市場」とも言われるゆえんである。
「BOPビジネス」は、BOP層が抱える「貧困」という大きな課題を、ビジネスの手法で解決しようとするものである。ただ、日本では経済成長の頭打ち感を打破する「魔法のソリューション」であるかのようにとらえていると感じることがある。
以前、「BOPビジネス」に詳しい英国人から、「日本では貧困層を意味するBOPと、利潤追求が本分であるビジネスが合わさったBOPビジネスという言い回しをよく聞くが、その使い方に違和感がある」という話を聞いた。「最貧困層のBOPに対して商品を売りつけ搾取しているようなニュアンスになる」というのがその理由だった。
「BOPという貧困層の人たちを巻き込むビジネスは、自社の利益だけでなく、その国での市場育成なども含めた“インクルーシブ(包括的)・ビジネス”というのが正しい姿になる」と彼は付け加えた。
筆者はその説明を聞いたとき、すぐには納得できなかった。通常のビジネスの手法で世界の貧困問題が解決するなら、よいことではないかと思っていたからだ。