「安価な自動車、ユーゴやプリムス・サテライトの類いでは、横断歩道を走り抜ける割合はゼロ%でした」と彼は2016年にナショナル・パブリック・ラジオで説明した。「高級車は、つまり、メルセデス・ベンツとかですが、46.2%が横断歩道を走り抜けました」。
ケルトナーが自分の研究を公表すると、高価なトヨタ・プリウスのハイブリッド車を運転している人がひどく機嫌を損ね、彼に手紙を書き、自動車が高価かどうかは関係なく、問題は、どんな種類の高級車かだ、と主張した。
これは、ケルトナーのものと競合する仮説だった。金持ちのプリウスの運転者は金持ちのメルセデス・ベンツやBMWの運転者よりも親切である、というのだから。
そこで、ケルトナーは確かめてみた。「じつは、プリウスを運転する人は最悪でした」と彼は笑いながら言った。
権力は人を自己中心的にする
権力についてのケルトナーの研究は、明確な作用を浮き彫りにする。権力のある人は、自分を抑制する力を失う傾向にある、というのがそれだ。「権力に酔う」というのは、まさに打ってつけの描写だ。
権力があるという感覚を強められた人は、他者にどう思われるかは、あまり気にしなくなる。他者の心をうまく読めなくなる。他者に共感する必要を、それほど感じなくなるからだ。彼らは、規則は自分には当てはまらない、と感じはじめる。
ケルトナーは、こう説明した。「より大きな権力を享受する人々は、衝動的に食べたり、性的な関係を持ったり、交通規則を破ったり、噓をついたり、騙したり、万引きをしたり、子どもからキャンディを取り上げたり、失礼な口や、下品な口や、無作法な口を利いたりする可能性が高い」。
「権力は腐敗し、絶対的な権力は絶対的に腐敗する」と述べたアクトン卿は正しかったのだ。
(翻訳:柴田裕之)
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