権力は、より多くの人にプレイをさせ、自分は勝つという自信を強めさせる。それとは対照的に、権力のない人は抑制される。先手を打って主体的に行動するよりも、事が起こってから受動的に行動する。用心深く、すでに持っているものを危険にさらすよりも守ろうとする。他者からの脅威や危険に敏感だ。
権力のある人が人生のギャンブラーなら、権力のない人はすでに手にしている数枚のチップにしがみつく可能性が高い。
ケルトナーのアプローチは、実験と観察データの両方に裏づけられている。彼は実験や観察を行って、さまざまな仮説を実世界で試す。
自分自身を観察していて生まれる理論もある(「自分がより多くの権力を持っているように感じたときには、より頻繁に悪態をつきます」と彼は私に語った。「自分でも抑えようがありません」。そして、調べてみると果たして、権力を得ると他の人々もより頻繁に悪態をつくことがわかった)。
高級車の持ち主は危険な運転をしがち?
実際の経験から理論が生まれることもある。ある日、ケルトナーが自転車で職場に向かっているとき、ステータスシンボルとなるべく存在している種類の自動車である、真っ黒なメルセデス・ベンツを運転している男性にはねられそうになった。
それがきっかけで、彼は考えはじめた。危ない目に遭うときの相手が、いつもオンボロの自動車ではなく高級車であるように思えるのはなぜなのか?
高価な自動車を運転する人は、事故を起こせば失うものがはるかに多いことを思うと、なおさら不思議だった。そのような経験は、ほとんどの人にとっては迷惑な話にすぎないが、ケルトナーにとっては仮説の材料になる。そして、仮説ができたら、彼は検証する。
ケルトナーは、1つ実験を思いついた。1人の研究者に頼んで、ある交通量の多いバークリーの道路沿いの茂みに隠れて、近づいてくる自動車のメーカーとモデルを書き留めてもらった。そして、別の研究者には、自動車の接近を待って横断歩道に出てもらった。自動車はそのまま通過できるものの、いくぶん荒々しい運転が必要になるタイミングでそうしてもらった。それで、どうなったか?
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