道長は傍若無人?紫式部に見せた意外すぎる素顔 宮仕えを始めた式部、宮中での心に残る逸話
『紫式部日記』に記される式部と宰相の君との逸話はほかにもあります。
御前から局へ下がる途中、紫式部は宰相の君の戸口をそっとのぞいてみました。すると、宰相の君は、お昼寝の最中。萩や紫苑など色とりどりの衣を中に着て、つやつやの打ち衣を上に羽織り、硯の箱を枕に眠っています。
「小さくのぞいた額のあたりがとても可愛らしく若々しい。絵に描いたような立派なお姫様」。紫式部は宰相の君のお昼寝姿をそう評しています。
信頼関係があった宰相の君と紫式部
そのまま通り過ぎるかと思いきや、紫式部は、宰相の君の衣を引きのけ「物語の女君のような感じですね」とつぶやきます。当然、宰相の君は目を覚まして、顔を朱に染めつつ「ひどいですね。寝ている者を前触れもなく起こすなんて」と返します。
2人の間に、信頼関係があったからこその会話でしょう。宰相の君も、本気で怒ったわけではなさそうです。朱に染まる宰相の君の顔を見て、紫式部は「整って素敵でした」と書いています。案外、紫式部は宮仕えを楽しんでいたのではないでしょうか。
(主要参考・引用文献一覧)
・清水好子『紫式部』(岩波書店、1973)
・今井源衛『紫式部』(吉川弘文館、1985)
・朧谷寿『藤原道長』(ミネルヴァ書房、2007)
・紫式部著、山本淳子翻訳『紫式部日記』(角川学芸出版、2010)
・倉本一宏『紫式部と藤原道長』(講談社、2023)
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