道長は傍若無人?紫式部に見せた意外すぎる素顔 宮仕えを始めた式部、宮中での心に残る逸話

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『紫式部日記』に記される式部と宰相の君との逸話はほかにもあります。

御前から局へ下がる途中、紫式部は宰相の君の戸口をそっとのぞいてみました。すると、宰相の君は、お昼寝の最中。萩や紫苑など色とりどりの衣を中に着て、つやつやの打ち衣を上に羽織り、硯の箱を枕に眠っています。

「小さくのぞいた額のあたりがとても可愛らしく若々しい。絵に描いたような立派なお姫様」。紫式部は宰相の君のお昼寝姿をそう評しています。

信頼関係があった宰相の君と紫式部

そのまま通り過ぎるかと思いきや、紫式部は、宰相の君の衣を引きのけ「物語の女君のような感じですね」とつぶやきます。当然、宰相の君は目を覚まして、顔を朱に染めつつ「ひどいですね。寝ている者を前触れもなく起こすなんて」と返します。

2人の間に、信頼関係があったからこその会話でしょう。宰相の君も、本気で怒ったわけではなさそうです。朱に染まる宰相の君の顔を見て、紫式部は「整って素敵でした」と書いています。案外、紫式部は宮仕えを楽しんでいたのではないでしょうか。

(主要参考・引用文献一覧)
・清水好子『紫式部』(岩波書店、1973)
・今井源衛『紫式部』(吉川弘文館、1985)
・朧谷寿『藤原道長』(ミネルヴァ書房、2007)
・紫式部著、山本淳子翻訳『紫式部日記』(角川学芸出版、2010)
・倉本一宏『紫式部と藤原道長』(講談社、2023)

濱田 浩一郎 歴史学者、作家、評論家

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はまだ こういちろう / Koichiro Hamada

1983年大阪生まれ、兵庫県相生市出身。2006年皇學館大学文学部卒業、2011年皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。専門は日本中世史。兵庫県立大学内播磨学研究所研究員、姫路日ノ本短期大学講師、姫路獨協大学講師を歴任。『播磨赤松一族』(KADOKAWA)、『あの名将たちの狂気の謎』(KADOKAWA)、『北条義時』(星海社)、『家康クライシスー天下人の危機回避術ー』(ワニブックス)など著書多数

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