半世紀も"主役"フロッピーディスクの栄枯盛衰 「なにそれ?」と知らない世代も増えてきた
極め付けは1995年、マイクロソフトがPC/AT互換機やNECのPC-98シリーズ向けに、GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース=マウスなどでカーソルを動かして使う操作系)を備えた画期的なOS、Windows 95を発売したことかもしれない。インターネット時代の到来とともに登場したWindows 95により、パーソナルコンピューターは一家に1台、オフィスでは1人1台という時代を迎え、人々がデータを受け渡すあらゆる場面で、フロッピーディスクが使われることとなった。
また、650MBという大容量の読み込み専用メディアであるCD-ROMも、Windows 95搭載パソコンとともに普及した。しかし、当時のPCは内蔵ハードディスクにWindowsなどのOSをインストールする際、最初にセットアッププログラムの起動ディスクとしてフロッピーディスクを使う必要があった。
1990年代の終わり頃になると、PCへOSをインストールする際の起動ディスクとして、CD-ROMが使えるようになり、PCにとってフロッピーディスクは必須のものではなくなった。また、この頃にはさまざまな大容量メディアが登場し、フロッピーディスクの需要は大きく減退。次第にメーカーはFDの生産から撤退するようになり、最後まで3.5インチFDを販売していたソニーも2011年に生産を打ち切った。
いまもフロッピーディスクを必要とすることがあるならば、それは使用するハードウェア側の事情によるケースがほとんどだと思われる。
主流になれなかった記録メディア
3.5インチのFDの爆発的な普及に至るまで、さまざまな代替品の競争があったことも忘れてはならない。1980年代前半には、5.25インチフロッピーの代替を目指して2インチ、2.5インチ、3インチ、3.25インチといったさまざまな規格のフロッピーディスクが各社によって開発された。ただ、いずれも5.25インチのシェアを崩すことはできなかった。
ただ、ミツミ電機が開発したクイックディスクは、任天堂の大ヒットゲーム機、ファミリーコンピュータの周辺機器として発売されたディスクシステムに採用されたことで、ある程度の成功を収めたといえるかもしれない。このディスクは3.5インチFDによく似た、3×4インチサイズの外殻を持つ磁気ディスクだった。
また、3.5インチFDの登場後、さらに大容量化を目指した記録メディア、例えばIomega(アイオメガ)のZip(容量100 / 250MB)、SuperDisk(120 / 240MB)などが製品化されたが、いずれもCD-R / RWが登場した2000年前後に勢いを失い、市場から退出していった。日本では一時期、光磁気ディスクのMO(128MB~2.3GB)なども普及したものの、やはり2000年代のうちに衰退した。
インターネット回線の高速化や、動画など大容量データを扱うサービスが増えていった結果、2024年現在は、物理的な記録メディアとしてはUSBメモリーや外付けのハードディスク・ソリッドステートドライブ(SSD)が店頭に並んでいる。またクラウドストレージサービスなども多くの人々が利用しており、フロッピーディスクを知らない若い世代も増えてきている。
現在、新品の3.5インチFDは市場在庫のみとなっている。いまだにアマゾンなどの通販サイトで比較的安価に入手できるのが驚きだが、それでも、行政手続きなどの重要な業務に、10年以上も前に生産が終了した記録メディアを使い続けていたことは、やはり健全とは言えない状況だったというほかない。
「フロッピーディスク戦争」に対し勝利宣言をした河野大臣は、別のレガシーな情報機器であるファクスをメールに切り替えるといった変更にも取り組んでいると、デジタル庁の会見で述べている。
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