「トランプ氏銃撃」国際ボディーガードによる考察 鉄壁だったはずの警護になぜ隙ができたのか?
犯人は警護していたシークレットサービスによって射殺され、その後、20歳の男と判明。演説会場そばの建物の屋根から、ライフル銃のような自動小銃で狙ったとみられるという。
今回の銃撃事件、世界最強と呼ばれるシークレットサービスがついていながら、なぜこのようなテロ行為を許してしまったのか。国際ボディーガードとして数多くの要人警護経験を持つ、民間ボディーガード会社代表の小山内秀友(おさない・ひでと)さんは、こう説明する。
「通常、アメリカ大統領選候補者には、選挙の120日前からシークレットサービスの護衛がつきます。トランプ氏の場合は前大統領ということもあり、おそらく大統領を辞めたあともずっとシークレットサービスの警護がついていたはずです。
ステージから130メートル程度しか離れていない建物にライフル銃を持った人物が容易に近づき、屋上に上がれてしまったことや、対狙撃チームから見て見通しのよいロケーションであったにもかかわらず、近くの建物の屋上からライフル銃で狙っている人物に気づくのが遅れたのは、シークレットサービスのミスであったと思われます」
実際、海外メディアの報道では、狙撃地点となった屋根に登る容疑者の男を目撃した住民がインタビューに応じ、「近くにいた地元警察関係者に男の存在を伝えたが、とりあってもらえなかった」と話している。
犯人の強い殺意があった?
小山内さんはまた、「事前の警護にミスがあった」と推測しながらも、「警備体制を上回る、犯人の強い殺意があったからではないか」とも指摘する。
「攻撃者にとってターゲットとの距離はとても重要です。距離が遠くなればなるほど、自分の身の安全を確保できる可能性は高くなりますが、相手を仕留められる可能性が低くなります。逆に、近ければ近いほど、相手を仕留められる可能性は高くなりますが、自分の身の安全を確保できる可能性が低くなります。
おそらく犯人は自身の身の安全という要素を捨て、より確実に仕留められる可能性にかけたものと思われます。そのため、ターゲットから約130メートルという距離まで近づいて銃撃を行いましたし、犯人は警護側の反撃を受け、死亡しています。
このように、自分の身の安全よりも、目的の達成を優先する攻撃者には高いモチベーションがあるため、距離を可能な限り縮め、攻撃成功の可能性を高めてきます。例えるなら、この攻撃手法は『自爆テロ』のようなものです」
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