死期を悟った50代女性が日記を他者に託した意味 末期がんを家族に告げずに逝く覚悟を決めた

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そして、2016年2月某日に「PET検査」とだけ書いたきり、日記の更新は途絶えている。

5年卓上日記の最後の記入(筆者撮影)

日記に添えられた「履歴書」

PET検査は、がんの有無や転移の具合を調べる全身対応の精密検査を指す。その結果、乳がんの転移が骨と肺などに見つかり、「余命半年くらい」と告げられたという。

その後、治療が奏功して命の危機を脱したものの、複数の場所に転移したがんは取り除けず、闘病しながらできるかぎり生活を維持する生活となる。しかし、次第に抗がん剤の効果が現れなくなり、すべての治療を停止して緩和ケアに移行することを決めた。

Mさんが偶然つけていたラジオで、ゲスト出演していた志良堂さんの声を聞いたのは、まさにその頃だった。手帳類プロジェクトというものがあって、他人の日記を収集しているらしい。体調が落ち着いたときに連絡先を調べてメールを送った。そのメールには自身の現状や動機について事細かに綴っていたそうだ。

そして2018年5月、志良堂さんの元に届けられたMさんの日記帳には、鉛筆で書かれた「生涯の履歴書」が添えられていた。それも含めて、全公開で託すことが認められている。この履歴書のおかげで、日記後のMさんの足跡を辿ることができた。後半の一部を抜粋する。

<2002~2003 留学
 2004 父が病気の為 帰国.
 (略)
 2016 病気の転移見つかる.
 余命半年くらいと言われるが、治療がきき現在に至る
 日記の中のDの所に行きたかったが、
 家の事を放っておけず、彼にも家族にも本当の事が
 言えないまま他界する事になる>

 

添えられた「履歴書」(筆者撮影)
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