一方ご夫君もいけません。ご自分の父親の性格を鑑みても、いったん別居から始まった二世帯が、離れがあるわけでもなく、2階があるわけでないアパートで同居するのは難しいと判断するべきでした。双方に相当な忍耐と妥協と知恵が必要です。
こんなことで離婚を言い出す前にご夫君は貴女に、「親の悪口は絶対に言うな。その代り、双方が上手くいくように、建設的な希望は聞く」という風に、強い覚悟と態度を貴女に示すべきでした。
結婚生活で、お互いの両親の悪愚痴はタブー
ただし悪いのはお義父様と夫君だけではありません。貴女も相当いけません。介護のための同居さえ、最初は頭から抵抗されました。夫の両親の悪口は、自分自身の悪口より夫には聞きづらいことなのです。
夫の家族も、貴女の知らない歴史があり情愛と絆で結ばれています。告げ口は合っていても聞きづらいものです。誤解があればなお聞きづらいのです。表現の仕方とタイミングに細心の注意が必要です。夫が精神的に大変な時に、夫婦喧嘩になるような言い方は、感心しません。
ここからが今回のコラムで最も申し上げたいことですが、結婚相手の家族の一大事にどう振る舞うかで、結婚生活の質と継続性が決まります。結婚相手の途方もない田舎の実家で、義父母の世話をした友人の話をさせてください。
私の同級生の美津子さん(仮名)の夫は、仕事優先人間でめったに帰郷しません。実家は信州の山奥で、美津子さんによりますと、「夫は山奥でイノシシしか見ずに育ったあと、都会に出てきて何の取り柄もない自分と最初に出会い、自分と結婚した人」だそうです。取り柄がないと言うのは謙遜で、彼女は美人で教養人で賢夫人であることに加えて、趣味は掃除というほど家はいつもピカピカで、子どもさんも皆、立派に育てた人です。
姑が倒れたとき、多忙で、しかも時たま帰郷して見舞うだけの夫に代わって、美津子さんが殆どの介護の手伝いを買ってでました。イノシシしかいなかった辺鄙なところでしかも美津子さんが泊まる部屋もない狭い実家です。離れた場所にあるビジネスホテルなども利用し、めどがつくまで、行ったり来たりしながら介護をしました。
大正生まれで田舎の古風な考えの舅・姑の長期の世話と介護は大変でした。でも彼女は夫に、愚痴は一切、耳に入れませんでした。息子らしいことができない夫にも葛藤はあるはずだから、自分がやるからには黙ってやってあげて、少しでも夫の心の負担を軽くしてあげたかったそうです。
「イノシシの次に自分を見つけてくれた夫への感謝や恩返しの気持ちが、自然にそのような行為にさせた」ととても謙虚です。「イノシシの次」と聞いて、思わず私は大爆笑しましたが、内助の功でも最高の部類ではないでしょうか。夫婦それぞれの親が一大事の時に、相方がどのように心を配るかは、良くも悪くも生涯心から離れない重大な問題です。この点、貴女は猛省しなければなりません。
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