しかし、その後、グーグルの登場で競争の構造が変わった。まず検索エンジンでグーグルが圧勝した。次がメールだ。04年に登場したグーグルのGメールが、無料で使える巨大な容量を提供して広範な利用者を獲得した。地図でもグーグルマップが、それまでの地図(ウェブの地図のみならず印刷物の地図も)を一掃した。
ITではしばしば「一人勝ち現象」が起こり、特定のソフトや機器が事実上の世界標準になってしまう。現在、検索とメールと地図では、グーグルのシステムが世界標準になっている。いかなるスマートフォンも、これらを標準として設定せざるをえないのだ。この状況は、英語が世界語になっているのと似ている。
日本では宇宙の彼方の戦争のように聞こえる
そしてこのことが、クラウド時代の勢力分布に大きな影響を与える。だから、「スマートフォン大戦争」は、実は「クラウド大戦争」なのである。それは、単に機器の製造の競争ではない。メールや地図までを含む、極めて広範囲にわたるクラウドシステムの覇権争いなのだ。
このような状況の中で、日本のエレクトロニクスメーカーは、機器の製造にとどまっている。しかも、サムスンの後塵を拝している。
これは、PCの場合と同じ構造だ。機器の製造にとどまるかぎり、際限のない値下げ競争に巻き込まれ、利益を挙げることはできない。スマートフォンやタブレット端末についても同じことが起こるだろう。日本のメーカーがこうした状態にある理由はいくつか考えられるが、そのうち大きなものは、日本ではスマートフォンはあまり使われていないことだ。