価格高騰で加速する工業製品の金(きん)離れ

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欧米の金融市場の混乱を背景に、「安全資産」としての人気が高まる金(ゴールド)。国際価格は10年前の6倍超に高騰し、国内の貴金属商には買い取りを求める人が列を成している。

その反面、価格高によって“金離れ”が進む分野がある。工業製品に使われる金だ。

金は宝飾用、投資用がほとんどだが、工業用も需要の約1割を占める。薄く伸びやすい、導電性が高い、さびにくいなどの特性を生かし、多くのエレクトロニクス製品に搭載される。携帯電話でも、電気回路の接点や充電部のコネクターなどに微量ずつ金が使用されており、ミクロの世界で輝きを放っている。

中でも重宝されているのが、ICチップの電気の接続に使われる、「ボンディングワイヤ」(以下、ワイヤ)と呼ばれる極細の線だ。高い導電性が求められ、金製が約8割を占める。

進む銅への置き換え

金価格高はワイヤに二つの面からの変化を促している。

一つは、金の使用量をできるだけ減らすために、より“細く”する技術革新だ。金製ワイヤの世界シェア4割を占める、田中貴金属グループの田中電子工業によると、従来は直径25マイクロメートル(100万分の1メートル)の細さが主力だった。これは髪の毛の約4分の1と極細。しかし、今ではさらに細い20マイクロメートル以下がシェア約3割に上昇、15マイクロメートルの量産化も始まっている。

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