世界侵略:ロサンゼルス決戦 --戦争映画と財政赤字の関係《宿輪純一のシネマ経済学》

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 この映画は突っ込みどころも満載だ。まず、この題名であるが、原題は『BATTLE: LOS ANGELES』である。なぜBATTLEの邦題が「世界侵略」なのか? 地球外のエイリアンだったら「地球侵略」ではないのか?

また、少人数である海兵隊がとても強い=エイリアンがやや弱い。やはり最後は戦争映画の基本に沿って、ロサンゼルスの海兵隊は勝利する。米国(それもロサンゼルスのみ)以外の、各国はエイリアンにやられたようであるが、なんと少人数で頑張るロサンゼルスのみが勝利しているようである。
 
 海兵隊の宣伝映画とも一瞬思えるが、それもまた楽しい。大らかな気持ちで見てほしい映画である。



 現在、米国をはじめ、欧州、そして日本も、先進国はどこも大変な財政赤字に苦しんでいる。米国の今年の財政赤字はラフな数字で130兆円(日本はこちらもラフで44兆円)もある。財政の中でも一般的に、軍事関係のコストは高い。米国の財政では軍事費が大きく、50兆円を超える。

ちなみに、個人的にも飛行機(戦闘機)が好きなのだが、ステルス戦闘機F22ラプターの価格は1機約120億円、最新鋭の次世代ステルス戦闘機F35ライト二ング�は1機約100億円などと言われている。庶民の感覚として、何がなんだかわからない値段である。米国も財政赤字削減のためには、軍事費の削減も必要となっている。

この映画を見れば、海兵隊、そして米軍の印象はよくなるであろうが、米軍の予算増額には貢献できるのであろうか。そんな目で見るとまた楽しい。

この映画は東日本大震災の影響で、公開が延期された。本作品の中ではロサンゼルスががれきと化したからであろう。ちなみに、今まで映画の中では結構、ロサンゼルスが破壊されている度合いが大きい気がする。9月17日より公開。



しゅくわ・じゅんいち
博士(経済学)・映画評論家・エコノミスト・早稲田大学非常勤講師・ボランティア公開講義「宿輪ゼミ」代表。1987年慶應義塾大学経済学部卒、富士銀行入行。シカゴなど海外勤務などを経て、98年UFJ(三和)銀行に移籍。企画部、UFJホールディングス他に勤務。非常勤講師として、東京大学大学院(3年)、(中国)清華大大学院、上智大学、早稲田大学(4年)等で教鞭。財務省・経産省・外務省等研究会委員を歴任。著書は、『ローマの休日とユーロの謎』(東洋経済新報社)、『通貨経済学入門』・『アジア金融システムの経済学』(以上、日本経済新聞出版社)他多数。公式サイト:http://www.shukuwa.jp/、Twitter:JUNICHISHUKUWA、facebook:junichishukuwa ※本稿の内容はすべて筆者個人の見解に基づくもので、所属する組織のものではありません。

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