政治指導者に関して、性別による違いがどれほど奇妙か、少し考えてほしい。
ウラジーミル・プーチンは、まるで時計で計ったかのように定期的に、上半身裸で乗馬しているところや、柔道の稽古をしているところや、その他のかたちで戦士のように力を誇示しているところの写真を公表する。
このようなシグナルが効果を発揮しうるのは、私たちの石器時代の脳が、リーダーシップの資質を身体的な大きさと結びつけて捉えている面が依然としてあるからだ。
だが、これは馬鹿げている。あなたが外科手術を受けるところを想像してみよう。担当の外科医が、頼んでもいないのに腕立て伏せを20回やり、自分の優れた身体能力を示したとする。あなたは別の外科医を見つけるとともに、おそらく、最初の外科医に医師免許を授与した機関に通報するだろう。
だが、政治指導者となると、現代社会は男性的な強さの誇示に報いることが多い。
進化のミスマッチのせいで、そのようなシグナルは今やまったく意味がない。なにしろ、たいていの人が覚えているように、アンゲラ・メルケルとジャシンダ・アーダーンは、現代屈指の有能な政治家だったのだから。この2人がベンチプレスでどれだけ持ち上げられるかなど、誰であれ、気にするべきだろうか?
進化心理学の説はみな論争の的になるので無理もないが、リーダーシップにおける性差別が石器時代の脳と結びついていることを、仮にあなたが疑っているにしても、文化的な女性差別の範囲の外にまで及ぶ、さまざまな研究結果を無視するのは、さらに難しい。
男性らしい顔に対する偏向した気持ち
現代のコンピューター画像処理技術のおかげで、研究者はきわめて正確に顔の画像を操作できる。1回クリックするだけで、顔の典型的な男性らしさを強めたり弱めたりすることが可能だ。
そこで、こう考えた研究者たちがいた。ある人の写真を撮り、そこから受ける男性らしさの度合いをわずかに高めたら、その顔に対する私たちの気持ちはどう変化するだろう?
男性らしさと、それに対する気持ちとの関係は、あなたが思っているほど単純ではない。リーダーシップについての実験では、女性の顔よりも男性の顔のほうが頻繁に選ばれる。これは、あなたの予想どおりだろう。
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