トランプもバイデンもイスラエルを支援する理由 聖書と冷戦が生んだ米国とイスラエルの同盟

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研究者や調査報道記者の努力で、共和党のニクソン大統領が1969年秋、訪米したイスラエルのゴルダ・メイヤ首相に、核兵器の秘密保有を黙認すると伝えたことが確実視されています。日本の佐藤栄作首相が沖縄返還交渉で、有事の核兵器再持ち込みをアメリカに事実上約束した「核密約」とほぼ同時期です。それ以後、歴代の米政権は共和党も民主党も、イスラエルの核兵器保有を黙認し続けています。

イスラエルはアメリカからNPT加盟を要求されることはありません。国際原子力機関(IAEA)の査察受け入れを迫られることもありません。国連安保理で非難決議や経済制裁を受けることもありません。イラクやイラン、北朝鮮などとイスラエルへの対応は異なっています。アメリカは核不拡散政策の「二重基準」だと批判されてきました。

軍事占領で安保条約に慎重になったイスラエル

アメリカは超大国です。同盟国イスラエルの盛衰、命運をアメリカが握っているように見えます。イスラエルはアメリカの51番目の州と呼ばれることもあります。両国は自他共に認める緊密な同盟国ですが、両国間に正式な安全保障条約はありません。

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イスラエルは第三次中東戦争までアメリカとの安保条約締結を望んでいました。アメリカのほうが慎重でした。圧倒的な人口と石油資源を擁(よう)するアラブ・イスラム諸国とイスラエルの武力紛争に巻き込まれることを、懸念していました。中東でのアメリカの国益を損ねる戦略的「負債」を抱え込むのでは、と心配していました。

イスラエルが第三次中東戦争で大勝利を収めると、両国の方針が変化します。イスラエルは広大な地域を占領し、国防上のクッション「戦略的深奥(しんおう)性」を獲得しました。卓越した戦闘能力を世界に見せつけました。アメリカはイスラエルが戦略的「資産」になるのでは、と評価し始めます。イスラエルは、王族や独裁者が支配する国が大半の中東で、リベラル・デモクラシーの価値も共有します。米ソの国益が衝突する中東で、アメリカニズムの旗振り役をやってくれそうです。

一方、「国家存亡の危機」を乗り切り、思いがけず中東の軍事大国となったイスラエルには別の計算が働きました。対米安保条約のメリットより、占領地での軍の行動の自由をアメリカから制約されるデメリットのほうが気になり始めました。弱者から強者になると、考え方が急変することがあるのは、個人も国家も変わりません。第三次中東戦争のころ核兵器という究極の防衛手段を手にしたこともイスラエルの観方を変えたのでしょう。

船津 靖 広島修道大学教授

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ふなつ やすし / Yasushi Funatsu

1956 年、佐賀県伊万里市生まれ、東京大学文学部社会学科卒。共同通信モスクワ、エルサレム、ロンドン特派員、ニューヨーク支局長、編集・論説委員などを経て2016年、広島修道大学教授。専攻は国際政治・報道。米中東外交、とくにアメリカ・イスラエル関係と宗教を研究。著書に『パレスチナ——聖地の紛争』(中央公論新社)。広島市在住。

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