「大学の友だち」は一生の友だちになりうるか Z世代を通して見えてくる「友だち作り」の変化

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

舟津:その違和感の一つが、ビジネスの論理以外はないのか、というところで。まさに「ノイズ」がない。「大学のときの友だちは一生の友だちになりうるか」という問いも、大学の中に友だちとだべるようなノイズがない都市型キャンパスだからこそ出てくるという事情もあって、その余白をもつことが許されなくなっている。

三宅:それはすごく思います。例えば都市型キャンパスの多い東京には、京都の鴨川的な空間が全然ないんですよね。同じような自然豊かな公園である新宿御苑も、素敵ではありますが有料ですし、コロナ禍のときは予約が必要でびっくりしましたよ。

舟津:この前、友人の家族と京都で会ったとき、5歳くらいの子が「鴨川行きたい! 鴨川行きたい!」って言ってました(笑)。鴨川の何が子どもをそんなに惹きつけるんでしょう(笑)。でも、そうした空間の有無は大きな要因かもしれないですね。

ノイズは自分の知らない可能性に気づかせてくれる

三宅:鴨川でも大学の食堂でもいいですけど、大学生にとって、やっぱり「だべる」ことができる空間は必要だと思います。結局、本も一緒で、本にアクセスできるある程度大きな図書館とか書店がないと、読んでみようとはならない。だから、ノイズが発生しやすい空間というのは確実にあるはず。東京だと、会社みたいなキャンパスも多いなと感じます。

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

舟津:近い話をこの前、知り合いともしたんですよ。京都って本当にノイズのある、雑味のある街なんです。センシティブな表現かもしれませんが、フーコーが『狂気の歴史』で述べたように現代というのは、障がい者の方が街から消えた時代なんだと。つまり、効率化やデオドラント化のために障がい者を隔離して見ないことにした。でも、京都ではそういう人たちが今なお街に溶け込んでいて、分け隔てがない。

三宅:それは京都に住んでいてすごくわかります。

舟津:自分と異なる人というのは、ある意味でノイズです。でもだからこそ、いろんな可能性に気づける。「なるほど、世の中にはいろんな人がいるわけやな」と。ノイズが必要だと言える主たる理由の一つですね。多様性に気づくための、自分の知らない可能性を知るためのきっかけなんだと。

(7月24日に配信される第2回に続く)

三宅 香帆 文芸評論家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

みやけ かほ / Kaho Miyake

1994年生まれ。高知県出身。京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了。天狼院書店(京都天狼院)元店長。2016年「京大院生の書店スタッフが「正直、これ読んだら人生狂っちゃうよね」と思う本ベスト20を選んでみた。 ≪リーディング・ハイ≫」がハイパーバズを起こし、2016年の年間総合はてなブックマーク数ランキングで第2位となる。その卓越した選書センスと書評によって、本好きのSNSの間で大反響を呼んだ。『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)、『人生を狂わす名著50』(ライツ社刊)、『女の子の謎を解く』(笠間書院)『それを読むたび思い出す』(青土社)など著書多数)。

この著者の記事一覧はこちら
舟津 昌平 経営学者、東京大学大学院経済学研究科講師

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ふなつ しょうへい / Shohei Funatsu

1989年奈良県生まれ。2012年京都大学法学部卒業、14年京都大学大学院経営管理教育部修了、19年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修了、博士(経済学)。京都大学大学院経済学研究科特定助教、京都産業大学経営学部准教授などを経て、23年10月より現職。著書に『制度複雑性のマネジメント』(白桃書房、2023年度日本ベンチャー学会清成忠男賞書籍部門受賞)、『組織変革論』(中央経済社)などがある。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事