「データ重視」の仕事に潜むこれだけのワナ 「デザイン的思考」を岩佐十良氏に聞く

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岩佐:クリエイターが長期滞在することを前提にした部屋、な〜にもしないでのんびり過ごしていただくための部屋など、さまざまな方に向けて部屋をデザインしました。宿泊する部屋選びひとつにしても、ぜひ楽しんでもらえたらうれしいです。

徹底的な“現場目線”から生まれる

常見:どうすれば岩佐さんのような「デザイン的思考」を普通のビジネスパーソンでも実践することができるのでしょうか?

岩佐:基本的な考え方として3つあります。ひとつは、先ほども言ったように「肌感覚」を大事にすること。データばかり見ても、世の中の本質には気づけません。2つ目は、「スピード」を重視すること。時代の流れはますます早くなっています。昨日正解だったものが、今日になればまったく通用しないことだってある。

ひとつの考え方や正解にとらわれず、これは世の中の流れとズレているなと思ったら、すぐ修正できるような機動性と柔軟性は持っておきたい。最後は、「徹底的にコミットすること」ですね。編集長になろうと、経営者になろうと僕は現場からは離れませんでした。自分でできることは何でもやってやろう。そんな気持ちがあったおかげか、今日まで何とかやってこられたのだと思います。

常見:心で感じること、当事者意識をつねに持つことが大事だと思いました。あと、日常的に「建設的な無駄」「意図的に作り出す無駄」を大事にすることですね。まずはランチセットでいつも頼まないものを頼んでみよう、バーゲンで実用性が低いけど感性に訴えかける服を買ってみようと(笑)。私はこれから岩佐さんがどこに向かっていくのか気になります。出版業界や旅館業界でも革命的な取り組みを実践され、どこがゴールなのかと。

岩佐:ゴールはまだ見えていないですね。僕にとって生きるテーマは、自分が面白いと思ったものやみなさんに知ってほしいと思ったことを「伝えること」なんです。今はそれが雑誌から宿に移行している途中です。それとは別に、今は「食」の分野にも興味を持っています。

粗製乱造されるB級グルメよりも、その地域特有の美味しくて安全でずっと残し続けたい料理「A級グルメ」を広めるプロジェクトを進めています。「A級グルメ」とは、“永久に残したい味”のことです。

常見:すばらしい。私、B級グルメに対して言いたいことがいっぱいあるんですよ。それは、その街らしいのかと。結局、その街らしくないもの、その街におカネが落ちないもの、米国の小麦を売るためのものになっているのじゃないかと。話を戻しますと、岩佐さんは本当に、さまざまなことに取り組んできたわけですね。

岩佐:だから、これから10年、20年先に何をやっているのか自分でも予想がつきません。僕は雑誌や旅館、食以外にも何でもメディアになる可能性があると思っていますので。

常見:いいですねえ。そう、実は私、明確なビジョンのようなものを話していただくよりも、どんな生き方をしたいかということを言う方が好きなのです。尊敬する方の共通項はそうですね。人間はついついデータや他人から与えられた答えに盲信しがちです。でも、岩佐さんの話を聞いて、目の前に指標や答えがなくてもそれを模索し続ける姿勢が大事なんだと認識しました。これからのご活躍も楽しみにしています。今日はありがとうございました!

5月、6月にお届けし、大好評だった営業座談会、営業のカリスマとの対談でも感じたことである。時代、市場の変化、「潮目」を見る力は重要だ。データからわかることもあるが、感覚からわかる部分もある。岩佐さんの話は、この営業関係者との対話とも通じると感じた次第だ。
“Don’t think. feel!”はブルース・リーの『燃えよドラゴン』の名セリフだが、ICTの時代、ビッグデータの時代だからこそ、感じること、これが大事だと思った次第だ。さあ、あなたは今日、何を感じたかな?

 

常見 陽平 千葉商科大学 准教授、働き方評論家

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つねみ ようへい / Yohei Tsunemi

1974年生まれ。北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。同大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。リクルート入社。バンダイ、人材コンサルティング会社を経てフリーランス活動をした後、2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師に就任。2020年4月より現職。専攻は労働社会学。大学生の就職活動、労使関係、労働問題を中心に、執筆・講演など幅広く活動中。『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など著書多数。

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