海上自衛隊の潜水艦メーカーは2社も必要あるか 川重の裏金問題で注目される潜水艦の実態

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木原稔防衛大臣は会見で筆者の質問に対して、防衛産業の再編は民間の問題であり、防衛省は関与しないと答えた。だがそれは責任の放棄である。潜水艦は唯一の顧客であり、税金を使って装備を調達している防衛省には防衛産業の適正化の義務があるはずだ。

防衛省は事業統合による生産効率も求めず、利益率を原価の8パーセントでは低いからと「他国並」に13パーセントに上げるが、これは事業統合を阻害し、経営の効率化や合理化の意思も奪う悪手である。他国のメーカーの利益率が高いのはリスクを負って自主開発を行い、輸出市場で勝負しているからだ。リスクを取らない国内の防衛産業の利益率を同じにする必要はない。利益率を上げるならば、事業統合による生産性の向上やコスト削減をセットにすべきだ。

他国より短い期間で廃棄される潜水艦

事業統合すれば潜水艦の製造ペースを下げることも可能だろう。その分防衛費を節約できる。海自の潜水艦部隊は長年16隻(+練習艦)体制だったがこれは戦略的な理由というよりも潜水艦メーカー2社を維持することが優先された結果だ。当時潜水艦はこの体制のためにわずか15年で「使い捨て」にされてきた。他国ではありえないペースで廃棄している。実際海自は耐用年数を15年と定めている。

他国は20~30年ぐらい使用され、退役後に輸出されることも少ない。確かに艦齢が長くなれば潜水可能水深深度が浅くなることはあるが、15年でそこまでひどくなることはない。

実際に第2次安倍政権では海自潜水艦隊が6隻増やされて22隻体制に増強された。だが増加分の潜水艦は延命措置によって既存の潜水艦の耐用年数を増やすことで対応している。「おやしお」級の1、2番艦は練習艦に艦種変更されたが、3番艦「うずしお」は2000年竣工だが、延命措置を受けて艦歴23年で現役である。つまり海自自ら耐用年数15年は嘘だったと公言しているに等しい。

潜水艦22隻体制を維持することは今後、人的資源の面からも不可能だ。護衛艦などの水上戦闘艦にしても慢性的に乗員の充足率はかなり低い。そして潜水艦乗組員、サブマリーナは航海中に密閉させた艦内で過ごすことからより厳しい適性が求められる。

ジミー・カーター氏は潜水艦乗組員だったが、適性がないと判断されて政治家に転向し、合衆国大統領となったほど適性がある人は限られる。当時の彼の著作『Why not the best?』のタイトルは潜水艦乗り時代の上官であったハイマン・G・リッコーヴァー提督の言葉であった。

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