ブックオフ橋本相談役が今やっていること 相談役になっても現場で大活躍
――働き始める際に不安なことはありましたか?
ええ、これを話しても誰も信じてくれないんですけど……。私は子どもの学校の懇親会で自己紹介するだけでもドキドキしてまともに話せないくらい、あがり症だったんです。
先生の陰に半分隠れて「橋本の母でございます……」と。
――とても意外です(笑)。
本当なんですよ。そんな風にして18年間家庭に入っていた私が外に出て、パートとはいえおカネをもらうために働くというのは、大きな不安がありました。
――ブックオフで働こうと思ったのはどうしてですか?
もともと私は栄養士の資格を持っていて、本当は自宅の近くにあった研究機関の食堂で働きたいと思っていたのです。でもそこの求人は埋まっていて入れなかった。
それで、偶然見つけたブックオフに応募しました。
――不思議なご縁だったわけですね。
ねえ。今にして思えば、本当に偶然の出会いだったブックオフが仕事を極める機会を与えてくれたのです。人間、どんな分野で花開くかわかりませんね。
「俺とブックオフ、どっちが大事なんだ?」
――働き始めるにあたって、ご家族の反応はいかがでしたか?
5年前に他界した夫からは、最後まで理解は得られませんでしたね。
仕事で遅く帰るようになって、「俺とブックオフ、どっちが大事なんだ」と言われて。しょっちゅう夫婦げんかをしていました。私は「ブックオフです」と(笑)。
私が仕事を頑張っていても、ほめてくれることは最後までありませんでした。
でもね、こっそりと私がインタビューを受けた新聞記事のスクラップをいっぱい集めていたんです。後で夫の会社の方から聞いたんですが、「新聞を広げてよく奥さんのことを自慢していましたよ」って。
――心の中ではうれしかったのかもしれませんね。
家では一言も、何も言わなかったのにね。男の人って面倒なところがあるのよ(笑)。
――お子さまの反応はどうでしたか?
専業主婦をしていたころは典型的な教育ママで、偏差値ばかり気にしていたし、門限は18時、添加物の入ったおやつはダメ。そんな厳しい母親だったんですが、仕事にのめり込むうちに家事は少しずつおろそかになってしまって。
「子どもに悪いことをしたかな」とずっと思っていたんですが、最近娘たちと話していたら「特に大変だった覚えはないし、気にしてない」って言うんです(笑)。
働く母親を見て、内心は理解してくれていたのかもしれません。働くお母さんから、「子どもに対して後ろめたさを感じる」という話を聞くこともありますが、気にし過ぎなくていいと思いますよ。
遊んでいるわけじゃないんだから。頑張る母親の姿を、子どもはしっかり見てくれているはずです。