ブックオフ橋本相談役が今やっていること 相談役になっても現場で大活躍

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現在のブックオフの店内

――実際にブックオフの仕事を始めて、「面白い」と感じるようになったのはいつごろからだったのでしょうか?

2週間が経つころには、すっかりはまっていましたね。オープンに向けて手作業で商品棚を仕上げながら、「これを何とかして間に合わせなきゃ」って。

入社前は「子どもの塾の送り迎えがあるので16時に上がります」とか、「土日は働けません」とか条件をいっぱい付けていたのに、気付けばすっかり仕事に夢中になっていました。

――どうしてそこまで仕事にのめり込めたのですか?

ひとつは「橋本真由美個人として認めてもらえる」ことがうれしかったんです。

それまではずっと家庭にいて「橋本さんの奥さん」「○○ちゃんのお母さん」でしたからね。給与振り込みのために自分名義の口座を開設したことも新鮮でした。ずっと夫の通帳で生活していたので。

二つ目は、「おカネが入ること」です。当時は時給600円で、月額にしても6~7万円くらいでしたが、夫の給料のほかに収入があるということが本当にうれしかった。子どもにも洋服1枚多く買ってあげられたりね。

三つ目が「中古書店の仕事の魅力」。中古本を買い取らせていただき、きれいに磨いて、拭いて、陳列して……。それが売れたときの喜びは、何とも言えないものがありました。

――仕事のモチベーションを保つ秘訣のようなものはありましたか?

仕事でほめられることがすごくうれしかったんですよ。当時の社長である創業者から「橋本さんの作った棚からこんなに売れたよ!」と言われて、また頑張ろうと燃えていました。

仕事を公平に評価されて、自由度のある「やり場」が与えられていたんです。これは会社を経営する上でもとても大切だと思っています。

――看板などで有名な「お売り下さい」のキャッチコピーも、橋本さんが考案されたんですよね?

はい。中古品の販売は、とにかく在庫が命なんです。買い取りに持って来ていただかなければ仕入れが成り立たず、商売にならない。だから「高価買取」といったような上から目線の言葉にはせず、一冊でもいいので買い取らせていただきたいという思いを込めて「お売り下さい」という看板を出しました。

マニュアルにもその思いを反映させていったんです。お客さまの車が駐車場に入り、トランクに大量の本を詰めた段ボールがあったら、スタッフが走って受け取りに行く。そんな風に行動を変えていきました。

自分から勝手に「正社員になります!」宣言

――入社2年目でパートのまま店長になっていますが、「社員になってくれ」という声は掛からなかったのでしょうか?

いえ、全然。当初は扶養控除の範囲内で働き続けたいと思っていましたからね。ただ、店の売り上げに対してはとても貪欲でした。当時人気だった『ドラゴンボール』や『スラムダンク』の漫画本が入荷したら、「何とか今日中に陳列すれば明日の売り上げにつながる」と思うんですが、勤務時間の制限がある。

どうやったらもっと長時間働けるんだろう? と考えて、「そうか、正社員になればいいんだ!」と。

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