【産業天気図・鉄道/バス】業績増額含みで、2006年度も本業堅調続く

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私鉄業界の今06年度は鉄道事業を中心に堅調な業績が見込めそうだ。
 私鉄大手14社(非上場の西武ホールディングスを除く)の前06年3月期は売上高7兆1881億円(前期比2.2%増)、営業利益5444億円(5.3%増)、経常利益4313億円(11.2%増)、純益2015億円(23.5%増)だった。収益柱の鉄道事業で京成電鉄<9009.東証>、相模鉄道<9003.東証>が久しぶりに輸送人員の増加を記録するなど関東圏を中心に景気好転の恩恵を享受した。関西圏などは輸送人員の漸減基調が続いたが、名古屋鉄道<9048.東証>、近畿日本鉄道<9041.東証>は愛知万博特需で潤った。これに加え、マンションを中心に不動産販売の好調が利益を押し上げた。その結果、前期に最高純益を更新したのは9社に達し、残り5社も最高経常利益を記録する好調ぶりだった。
 今07年3月期は14社ベースの『会社四季報』予想で、売上高7兆1735億円(0.2%減)、営業利益5101億円(6.3%減)、経常利益3996億円(7.4%減)、純益2356億円(16.9%増)を見込んでいる。見掛け「減収(経常)減益」だが、実態としては堅調が続くと考えてよいだろう。
 鉄道の輸送人員は今期も東京急行電鉄<9005.東証>、京浜急行電鉄<9006.東証>、小田急電鉄<9007.東証>、京王電鉄<9008.東証>、相鉄の関東5社が増加を見込んでいる。他社は漸減基調が続く見込みだが、減収予想6社のうち名鉄、近鉄は特需剥落と連結子会社の変動、京王は経理処理の変更によるもので、他社も含めて基本的には本業が悪化している訳ではない。営業、経常利益は5社が増加を見込み、9社が減少想定。不動産販売の好調一服も減益予想の一因だ。しかし、純益は11社が増加を見込み、減少予想は3社に過ぎない。前期は東武鉄道<9001.東証>、京急、京成、近鉄、阪急ホールディングス<9042.東証>、南海電気鉄道<9044.東証>(前期は唯一の最終赤字)が大きな減損損失を計上したが、今期はそれが消えるためだ。今期は純益ベースで見るのが、最も実態を表していると言える。
 今期営業減益を予想しながら、なぜ実態は堅調と見るかと言えば、一つは個人消費を中心に景気の好調が続いているためだ。これは雇用状況の好転による定期旅客増や、消費、サービス部門に恩恵をもたらす。もう一つは私鉄業界特有の“クセ”で、期初予想を固めに見て、低く発表する傾向があるためだ。前期も期初予想では前々期比で売上高2.3%増、営業利益4.6%減、経常利益6.4%減、純益6.9%減と見ていた。これに対して、実績は期初予想に対して、売上高こそ0.1%下回ったが、営業利益は10.4%、経常利益は18.7%、純益は32.7%も上回った。前期は予想外の景気好転で、特に期初予想との乖離が大きくなった感はあるが、今期もそこそこ増額され、営業、経常利益も高水準横ばい程度を確保するのではないかと考えられる。
【中川和彦記者】


(株)東洋経済新報社 会社四季報速報プラス編集部

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