さらに、ギリシャは、本当に苛烈な緊縮財政をしたといえるのだろうか。確かに、ギリシャはこれまでも増税や歳出削減を行ってきた。
2010年に最初の金融支援を受ける直前の2009年から、直近の2014年までの間、歳入はどうだったか。歳入(公債による収入を除く)は、2014年には2009年の約90%となり、1割減った。
これは、その間に行なわれた財政改革の一環として付加価値税を増税したことで、経済成長率が低下したのが主因かというとそうではない。2009年から2014年の間に歳入が1割減った主因は、社会保障負担(社会保険料収入等)が減ったことである。これが、歳入減少額の過半を占める。ちなみに、この間の付加価値税収は、マイナス成長だったにもかかわらずほぼ維持した。
社会保障負担の対GDP比でみると、ギリシャはこの間約13%でほぼ一定なのに対して、同時期のドイツは16.5%前後、フランスは19%前後、EU諸国平均でも15.5%前後である。このことは、ギリシャで保険料率の引上げが不十分だったことを物語っている。
他方、歳出は、最高水準だった2009年に比べて、2014年の歳出は約70%となった(国民経済計算の一般政府ベース)。つまり、歳出を3割削減したともいえる。しかし、2009年の最高水準の歳出額は、2005年からたった4年で1.5倍にも増やしたものだった。2014年の歳出額は、まだ2005年の水準にすら戻っていない。
歳出を削減するタイミングでは、それが経済成長率を落ち込ませる要因にはなる。しかし、それ以前の問題があったのだ。つまり、2005年からたった4年で1.5倍に歳出を膨らませるほど、財政を悪化させてまでして支出をばらまいていたことを忘れてはいけない。
日本も「苦い薬」を飲まなければギリシャのようになる
財政に過度に依存した経済は、財政が立ち行かなくなればたちまちダメになってしまう。だからといって、「財政依存を早期に断つのは体(マクロ経済)に悪いから、苦い薬(財政再建策)を飲むのはやめておけ」、ということでよいのだろうか。
決してそうではない。
これは、ギリシャだけの他人事ではない。日本の財政健全化のあり方にも重要な示唆を与える。日本は、ただちにギリシャのようにはならないが、ギリシャのような状態になる前に、早期に歳出改革などに取り組んで、破局を避けなければならない。
歳出改革を行えばマクロ経済に悪影響があるとして、それを避ければ、マクロ経済はますます財政依存になり、そこから抜け出せなくなる。それは、経済成長を促進するためにも望ましくない。なぜなら、経済成長を促すのに不可欠な生産性向上は、民間での自律的な取組みによって成し遂げられるのであって、政府からの財政的支援がいつまでもついていると、そうした自律的な取組みを阻んでしまう。
過度に経済成長に依存して税の自然増収を当て込んで財政健全化を進めれば、「捕らぬ狸の皮算用」となっては財政収支は改善しない。それよりも、歳出改革をキチンを行うことで確実に財政収支を改善できる。その段階では、社会保障の中で守りたい給付を守りつつ、非効率な歳出を選別して削減できる。ギリシャのようになる前に、厳しくとも果敢に歳出改革に臨まなければならない。
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