「金持ちエリート政党」に変貌したアメリカ民主党 トランプ&サンダースが前面に出る絶望的状況

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そうした戦争の損失のまっただ中に、アメリカ経済はサブプライム住宅ローン焦げ付きから大手投資銀行リーマン・ブラザーズ破綻(2008年)へと至り、世界的金融危機と大不況を招くことになる。

ブッシュ共和党政権からオバマ民主党政権への交代期に当たったが、両政権を通じて金融界・財界重視のネオリベラル的対処方針は変わらずに続いた。オバマ政権下で膨大な数の市民が適切な救済策を得られぬまま住宅を失い、劇的なまでの中産階級崩壊が起きてしまった。

こうした事態に対し国民の怒りや不満は鬱積し、2016年大統領選ではついに左右のポピュリズムが噴出した。その受け皿となったのが右にトランプ、左にバーニー・サンダースという、ともに2大政党の本流とは無縁な異端の政治家だった。

トランプとサンダースの登場

トランプとサンダースの登場は、1970年代末以降2大政党が二人三脚で推し進めて格差を拡大させたネオリベラル経済政策と無益な戦争に中間層がノーを突きつけた現象だと解釈するのが順当だ。

ヒラリー・クリントン、バイデンをはじめ多くの民主党議員もイラク戦争には議会で賛成票を投じているし、ビル・クリントン、オバマ両政権のネオリベラル経済政策を支えてきた。共和党ではそれは「レーガニズム」と呼ばれる政策体系の中核となっていた。

9・11以降の対テロ戦争を思想的に主導してきたのは、ネオコンサーヴァティヴと呼ばれる知識人集団で、民主党系だったのが共和党系に鞍替えした者が多かった。

トランプによる共和党「乗っ取り」により、保守側では経済ネオリベラリズムとネオコン型安全保障政策を核とするレーガニズムを否定する新しい思想運動が巻き起こっている。

他方、民主社会主義者を自認するサンダースの民主党内での躍進は、ネオリベラル化したミニ共和党になった1980年代以降の民主党に対する否定であり、ニューディール型への回帰を促している。

1930年代から40数年間2大政党を覆って続いたニューディール型優位の政治が対外戦争の失敗と経済運営の行き詰まりで崩壊した後は、1970年代末からやはり2大政党を覆ってネオリベラリズム優位の政治が続いた。だがそれも、40数年を経て、対外戦争の失敗と経済運営の行き詰まりで、オバマ政権で終わったことになる。

これが2大政党が「共犯」となって、トランプそしてサンダースという異端の政治家を人々が正面舞台に押し出さざるを得ない絶望的状況をつくりだした背景である。

会田 弘継 ジャーナリスト・思想史家

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あいだ・ひろつぐ / Hirotsugu Aida

1951年生まれ。東京外国語大学英米語科卒業。共同通信社ジュネーブ支局長、ワシントン支局長、論説委員長などを歴任。その後、青山学院大学教授、関西大学客員教授を務め現在に至る。著書に『破綻するアメリカ』(岩波現代全書)、『トランプ現象とアメリカ保守思想』(左右社)など。訳書にフランシス・フクヤマ『政治の衰退』(講談社)など。

 

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