トルクメニスタン「地獄の門」軽自動車で訪ね挫折 地獄を見るなら夜、と「道なき道」を行くも闇
だからほら、タイヤがよく滑るようになってきた。ずるるるーっと。まずくね?
こんなところで砂に埋まったら、幹線道路から離れているから、誰も発見してくれないよね? もし砂嵐がきたら、轍が消えて遭難だ。もれなく涅槃ゆきだ。
すでに地獄の一丁目まで来たようで、ボクらの命は風前の灯になってきた感があった。よく考えよう、命をかけてまで頑張ることはないだろう。地獄はいつでも逝ける。引き返すことにした。
幹線道路が見える娑婆まで戻って、その夜は、車のなかで安らかに眠ったのである。すでに300キロも走ったから、仕事はなんとかなりそうだということにして。
茶屋のオヤジのJeepで突破
翌朝、目が覚めたら腹が減っていた。
地獄へ行くのに何も急ぐことはなかろうと、茶屋まで戻り、腹ごしらえをすることにした。
茶屋のオヤジに、
「うちの車、砂に弱いんだけど、地獄の門のあたりってどんなですかね?」 と訊いてみた。
「普通の車じゃ無理だ。砂に埋まって動けなくなるぞ」
「あんたの車ってあれか? あれじゃあ、絶対に埋まる」
「このあたりじゃ、俺のJeepだけだな、あそこに近づけるの」
「悪いこと言わねーから、俺のJeepに乗ってけ。安くしてやっから」。やっぱり砂が深いのか。
日本の閻魔様には、地獄で砂に埋まったから納品できませんでした、と言っても理解してもらえるとは思えないから、オヤジのJeepに乗ることにしよう。