トルクメニスタン「地獄の門」軽自動車で訪ね挫折 地獄を見るなら夜、と「道なき道」を行くも闇

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アスファルトの原料はオイルだから、これもまた産油国の賜物である、と褒めていたら、ガタガタ道になった。懊悩に満ちた深いシワが刻まれていて、ときどき穴が空いている。暗いから、落ちる寸前まで存在がわからないという立派なトラップとして。穴に落ちては、その衝撃にChin号が壊れたんじゃないかと肝を冷やした。

強盗は隠れていまいかと左右の闇を睨みながら路面の穴をまさぐり、木一本生えていない土漠の一本道をひた走った。

地獄の門が見つからない

地獄の門にほど近い集落、ダルヴァザに着いたときには夜中の1時をまわっていた。粗末な建物がふたつみっつ見えるだけで、周囲360度、闇しかない。

これが日本なら、近づくにつれて「地獄まであと5キロ」とか、「おいでやす、地獄へ」とか、地獄の門ならぬ、地獄の戸、窓、塀、庭と類似品が並んでいて賑わっていそうなものだけど、ひとつも看板がない。豆電球すら灯っていない。

「夜の地獄ツアー」なるものもないようで、ひとっこひとりどころか、生きとし生けるものすべての気配がないのだ。

はて、困った。どこに地獄があるのだろう?

わざわざ日本から軽自動車で訪ねてくる人がいるくらいの観光地だというのに、案内のひとつもないとは思わなかった。

「スマホの地図だとね、10キロくらい南に行くと、左側に点線が延びてるよ」

「線の横に、To Fire Craterって書いてある」

それって、訳すと“火の穴”だよね。地獄の門は確か、地面に空いた穴だ。そこにガスが溜まって危ないから、火を点けたんだって。それだよきっと。

さっそく地図アプリの点線道を探してみた。けど、これがどういうわけかみつからない。一本道を何度も行ったり来たりしたけれど、ヒントらしき石ころも足跡も三途の川も何もなかった。すっかり地獄なんてどうでもよくなったころ、

「もしかして、あれかも」

次ページ土漠の奥へ延びているひと筋のタイヤ痕
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