人間はダメだと思った瞬間からが勝負の時だ 森川亮と奥田浩美が「仕事の流儀」を語る

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奥田:“誰”が“何”をやるのかもスタートアップでは大事ですね。起業家が資金や人を集めるのは、個人としての魅力と、この事業をやりたいんだという情熱。森川さんの著書にも書かれてましたが、モチベーションは人があげるものではなく、自分がこうしたいと思うもの。すでに持っている人でないと、社会的意義やこれからの未来をいくら説いても、感情がわいてこないんですよね。IVSに来て成功し続けているスタートアップは、ずっと先の未来予想図を描いていた人よりも、未来は見ているんだけど、目の前の一つひとつに検証しながら立ち向かっていった人が多いんです。

森川:ロジックだけで語る人は投資家には向いているけど、事業家や新規事業には向かないですよね。紙の企画書だけで終わる人が多い。メッセージの発信力が重要なんだと思います。発信すると感化された人が集まってきます。どんなにいいサービスや企画でも、知らなければ共感のしようがないものですものね。

新規事業に、成功体験の必要性はある?

奥田:成功体験がないと事業が興せないと考えている人が多いようですが、私は著書でも書いていますが、ワクワクできるかどうかがいちばん大事だと思っています。

森川:僕はその両方ですね。儲かるだけじゃだめだし、やりたいだけでもダメ。それにタイミングも必要だと考えています。世の中で必要にされていることを見極めることが大事。それに向かってある程度妥協も必要となりますね。

奥田:そのタイミングはどう見極めていますか?

森川:いつの間にかというのが多いですね。やりながら変わっていく場合も多い。世の中に求めてやりたいという人も増えてくると、連携する企業も増えて、売り上げにつながっていく。誰も必要とされないと、やはり大きくならないし。

奥田:一人のファンも作れないのはダメですよね。「俺は世界を変える」という若者がたまにいますが、まずは自分が変わって、隣の人を変えてみせろと。隣の人に共感されていないサービスなんて、まず成功しません。1億人の中にひとりは、誰にも理解されない中から新たなサービスを考え出す人もいるかもですが。

私の事業もタイミングが大きく影響しました。1991年に事業を起こした時はまだインターネットが使われていたのは大学か軍事施設くらいで、次世代通信技術と呼ばれていた時代。「今ここに接している自分にチャンスがある」と思いました。米国がMacWorldを大々的にやっていた時代に、日本にはまだIT企業のプライベートイベントはなかった。日本にそうしたニーズがあるか確証はなかったけど、ローカライズする仕事を始めたんです。半年くらいはまったく反響がなかったんですが、1本決まったらその後はどんどん仕事が決まっていきました。

森川:日本は前例を大事にしますからね。

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