人間はダメだと思った瞬間からが勝負の時だ 森川亮と奥田浩美が「仕事の流儀」を語る
奥田:森川さんは著書『シンプルに考える』のなかで、事業計画はいらないと書かれていましたね。社員とはその辺をどうやって意識共有しているのですか?
森川:インターネットの世界はスピードが早いですから、ビジョンを立ててもすぐ計画を変えざるを得なくなります。LINE時代はビジョンとか計画とか、そういうのを気にする人はついてこれなかった。今の社会は自分でなんとかしようと思う人でないと、成果が出ない。だから計画を達成することにこだわるよりも、現場がいいものを作れる環境を作るほうがいいと考えたのです。
奥田:「これをやりたいんです」という提案にはどういう形で判断しているのですか?
森川:私の役目は出してきたプランをいろいろな角度から判断し、絞り込む役割なんですが、成功するのは勝手に作っちゃう人ですね。目の前で人を集めるサービスを作ってきたらNOと言いにくいですし。おカネがあろうがなかろうがあきらめてたらそこまで。結局は情熱がないといいサービスは作れません。上司にダメだと言われてからが勝負ですよ(笑)。私自身も日テレにいたときは社内プロバイダを作ってましたが、会社の3分の1くらいをユーザーにしたら、誰も怒りませんでした。
奥田:上司にダメだと言われて、上司を説得するような対策を考えてるのもダメですね。向き合うべきはサービスなんだから。私なら目の前に敵がいたら、ぐるっと抱きしめて前に進みます。
森川:敵を作らないことは大事ですね。優秀な人ほどケンカはしません。
奥田:上司だろうがクライアントだろうが、自分の意見に対して違和感を持つ人には、時間をかけて説得します。それはもうニコニコの笑顔で(笑)。相手がダメ出しした部分を「たしかに●●さんがおっしゃることは正しいですね」と全部口にして肯定し、「立場的にそう判断するのは仕方ないと思いますが……」と、企画の背景から説明し直す。相手の立場を理解していることを伝え、褒め称えながら解きほぐすんです。
森川:相手が理解できないとイエスと言われないですものね。NOといわれるのは共感や感受性の部分が大きいから。
奥田:コミュニケーションの部分は密にやっています。そこに時間をかける分、ほかにスピードをかける。障害があったら、抱えて説得しながら走っちゃいますね。
森川:コミュニケーションは楽できないですよね。私はあきらかにダメそうな人や、やぶへびになりそうな人にはなるべく近づかないけど(笑)。
奥田:でも、やるだけやってダメだったら、その達成感できっぱり切り捨てます。人間同士、9割はもともとわかり合えないと思っているので(笑)。
未来は不確実だから、その不安を楽しもう
奥田:森川さんは著書で、未来は不確実だから可能性は無限大にある、「不安を楽しむ」べきだと書かれていますが、私にはこれがいちばんささりました。そう思えるのは適性や、経験ないとなかなか難しいと思うのですが、森川さんはどういう背景からそう考えるようになったのですか?
森川:私は前職の前の社長が言った言葉に影響を受けました。結果が出るかわからない事業の判断をするときに、みんながリスクがあるからと反対したんです。でも社長は「ダメだったら変えればいい。お客さんがいちばん大事なんだから、そこに集中するべき」と言ったんです。地位とか名誉が人を幸せにするとどこかで思っていたんですが、それからずいぶん変わりました。
採用するときもポジションとか経験では採らず、やりたいことを熱意を持って話す人ばかり集めてました。「何したらいいですか?」ではなく、自分から動き出すような人。何もない人から引き出すというパワーを割くことはしませんでしたね。
料理と同じで食べたいのが決まってない人は店に入れない。その日の夕飯を考えて決めることからリーダーシップなんです。何でもいいと繰り返している人は、いつまでたっても前には進めない。何でも自分で決めて進むべきだと思います。
(文:馬場美由紀)
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