人間はダメだと思った瞬間からが勝負の時だ 森川亮と奥田浩美が「仕事の流儀」を語る
森川:去年LINEを辞めることを決めてから、新しい事業を考え始めました。メディアのことを考え出したのは、年末くらいから年明けくらいですね。それから資金を調達し、人を探して。細かいところは年明けくらいです。考えながら作るみたいなスピード感で動いてきました。
奥田:スピードが早いですよね。森川さんの著書「シンプルに考える」にも書かれていましたけど、とにかくスピードが重要なのだと思いました。そういう時代の象徴的な起業の仕方なんだと。
森川:日本人はスピードが遅いじゃないですか。すぐ考えこんじゃう。
奥田:私たちが普通のスピードでやっていることを、世間の人たちは見切り発車だというので、「人生は見切り発車でうまくいく」という本を書きました。見切り発車こそが普通なんだと発信し続けてます。
森川:考えすぎなんですよね。何も考えないのは問題ですが、考えて1時間で決めるのと6時間考えて決めるのを比べて精度が違うかというと、そんなに変わらなかったりします。ある程度考えちゃうと、それ以上考えても正直あんまり変わらないんですよね。
奥田:それは今までの仕事の中で実感していました?
考えて議論すると、劣化する
森川:考えて議論すると、劣化することが多くて。最初に考えたことがいちばんキラキラしていたことが多いんですよね。だんだん輝きを失って、最後には落としどころを考えちゃってるようでは、どうしようもない。やはり直感が大事。
奥田:具体的に事業を決めたあとは、どう動かれたのでしょうか。
森川:メディア事業をやると決めてからは、若い人にフォーカスして一気に人を集めてきましたね。この新事業については、発表したらすぐ出さなきゃいけないなと思ってて。発表したら似たようなものが出てきたり、あれこれ言われる可能性があったので、3月末に辞めて4月10日に出すというスピード感で出しました。出したら出したで、1日も休まずに次から次へとやってますけどね(笑)。
奥田:すでに何百というコンテンツが上がってますものね。
森川:「クリッパー」と呼ばれる約100人のモデルやタレントがファッションやフードなどの動画情報を配信しているのですが、今は1000コンテンツくらいかな。自分が若い女性ではなし、キレイやおしゃれの概念が多様化しているから、何がおしゃれなのかわからなくなることもあります(笑)。そんな緊張感があるなかで、次々とコンテンツを作っています。
メディアはコンテンツが大事なんですが、集客難易度が高い。最近は記事をネット上から集めて、安く集客しようとするバイラルメディアが増えて、自社コンテンツでブランドメディアを作ろうとする人は少ないみたいですが(笑)。
奥田:先日開催されたIVSのLaunch Pad(Infinity Ventures Summit(インフィニティ・ベンチャーズ・サミット)。経営者・経営幹部を対象とした年2回の招待制オフサイト・カンファレンス。「Launch Pad」は新サービスの発表の場)では、教育アプリを作っているスタートアップが、自分たちはコンテンツの中身で世界を変えると言ってましたね。プラットフォームに何でも乗せますではなく、中身を作れる力がなければいい人も集まってこない。自分たちにしか作れないもので、勝負すると宣言していました。
森川:マーケティングもコンテンツ力も、両方必要なんでしょうね。いいものを作れば人は来るだろうというのは正論ですが、too muchになってしまった大手メーカーの悲哀もあります。結局はバランスなんだと思います。