「あなたのため」が「教育虐待」に変わるとき 子供の人生を狂わせる「追いつめる親」たち
「母親という名前の宗教」
知佳さん(仮名)も「教育虐待」の被害者だった。学歴がないことが、両親のコンプレックスだった。「あなたはなんとしても大学に行きなさい。お父さんとお母さんのような悔しい思いはさせない」。知佳さんは幼いころからそう言われて育った。物心がついたころから、毎日ピアノの練習と勉強をさせられた。遊んだ記憶は、ほとんどない。
テストの点が悪いと殴られた。テストでいい点をとって、喜んで報告しても怒られた。「勘違いしないで。テストでいい点がとれたのはあなたの力じゃない。お母さんのおかげなのよ。わかってる?」と言われるのだ。
小学校の友達と交換日記をしているのを見つかったときには、「勉強以外のことをするな」と怒鳴られ、叩かれ、その後1カ月間、無視された。
中学生になると、知佳さんは自殺も考えた。今思い返せば、本気で死のうとしていたわけではなかった。「どうでもいい」という感じだった。「ここで人生が終わっても、私は悔しくない」。母親が悔しがる姿を見てやりたかったのだ。
自分が「教育虐待」の被害者であると、知佳さんが気づいたのは30歳を過ぎてからだった。結婚してから、夫にやたらとくってかかるようになった。明らかに八つ当たりだった。さらに子どもをもうけようと思ったとき、とてつもない恐怖と不安が襲ってきてパニックに陥ったのだ。
知佳さんは心理カウンセリングを受け、ようやく過去のトラウマから解放された。「私は、『母親という名前の宗教』にとらわれていました。母の信条に反することをすれば天罰を受けることになると思い込んでいたのです」。知佳さんはようやく「母親という名前の宗教」を抜け出した。母親に恐怖を感じなくなった。
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