つまり、現状が安定しているからこそ、脱出できる。ヤクザ映画がはやったのもそこに理由があります。社会が安定しているからこそ、アウトローへの憧れが生まれていたわけです。ジャーナリストが無頼派と見られていたのもこの影響でしょう。
多様性が進む一方、不安を抱えて健全志向へ
時代が変わって、今は風通しがよくなり、多様性も進んで、抑圧がかなり薄まりました。一方で、社会そのものが不安定になり、誰もが、自分の居場所がはっきり定まらないという不安を抱える時代になってもいます。
そういった社会では、人々がアウトローに憧れなくなります。映画やアニメも「脱出モノ」ではなく、「仲間モノ」「つながり」といったテーマが増えました。
自分の足元がどうなっているのか、しっかり固めたいという所から、健康で健全な生活を維持していきたいという意識が生まれ、健康志向の高まりが始まったと考えられるのです。
20世紀的な身分が安定していた世界は、高度経済成長期の副産物だったと考えるならば、そんな世界はもう二度と来ないとも言えます。どんどん多様性が進む一方で、このポスト近代社会においては、足元の不安定さは永久になくならないでしょう。
そうなれば、やはり、ますます健康に気を使うようになるということになります。そういった意味でも、今後「休養学」は、ますます注目されるテーマになるでしょう。
(構成:泉美木蘭)
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