ハワイ追い抜く「沖縄」観光地モラル低下のヤバさ サンゴの踏みつけなど生態系への影響も問題に

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アンケートから11年が経過しているが、これら「早急に環境保全が必要なサイト」とされた場所のうち、法に基づいた対策が予定されているのは、世界自然遺産に登録された西表島の「ピナイサーラの滝」など、ごく一部である。

それ以外の地域でも、死亡事故の多さ(真栄田岬、ター滝)や半グレ集団の資金源となっているビーチなど、現在もさまざまな課題が指摘されているが、国や県、自治体は重い腰をあげず、今も無秩序な利用が放置されている箇所が数多く存在する。

特に、真栄田岬の実証実験でも出てきたように、事業者のモラルの低さは顕著であり、環境を守りながら真っ当なエコツアーをやりたいと考えている事業者が損をする構造になっている点は大きな課題である。

レンジャーが少ないといった問題も

筆者の研究プロジェクトでは、エコツーリズムを実施している多くの事業者に聞き取り調査を実施しているが、「法令違反をしている事業者に注意をしたら逆に恫喝された」とか、「お前、裁判したいのか」と怖い顔で言われたという話を頻繁に聞く。

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エコツーリズムは国立公園内で実施されていることが多いが、日本では巡視活動を行うレンジャー(自然保護官)が極めて少ないなど、本来自然を守るべき場所の利用の仕方として、多くの問題がある。

また、こうした悪質な事業者は、ガイド技術や安全面の対応が不十分であるにもかかわらず、派手なウェブサイトやフリーペーパーの広告を駆使し、安価な値段で観光客を集めることに長けている。

本来、ガイド技術や安全面の対応をしっかりやるとツアーの金額は上がらざるを得ないが、観光客はそのことがわからないのである。

沖縄県が基地関連産業から脱却して自立したいという思いから、観光産業に前のめりになってしまう状況があることは理解するが、その素晴らしい自然や文化を切り売りしてテーマパーク化してしまっては、元も子もない。

京都や富士山もさることながら、沖縄こそオーバーツーリズムの問題が根深く、深刻であると筆者は考えている。

田中 俊徳 九州大学アジア・オセアニア研究教育機構 准教授

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たなかとしのり / Toshinori Tanaka

1983年、鹿児島県出身。京都大学大学院修了(博士/地球環境学)。ユネスコ本部世界遺産センター及びユネスコ日本政府代表部にて在外研究。北海道大学大学院法学研究科特任助教、東京大学大学院新領域創成科学研究科准教授等を経て、2021年4月より現職。専門は、環境政策・ガバナンス論。近著に「森林環境2024:人新世の生物多様性」(森林文化協会)、「自然保護と平和構築」(文化科学高等研究院)など。

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