岸博幸氏「高齢者の社会保険料」一律支援は限界だ 治療の費用で実感した事、インタビュー後編

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――国の政策に関わることがある岸さんとしては、どうすればこの社会保障制度が維持できると思いますか?

ここが本当に難しくて……。僕自身がこういう治療をして、制度を利用した経験から言うけど、高額な薬を全部保険の対象にするのは無理があるよね。

ただ、これに対する明確な“解”ってなくて、少なくとも所得や資産が多い人は自己負担額を増やすしかないんじゃないかなって、思っています。これは年金制度にも共通する問題なんですけれども。

例えば、高齢者。今は自己負担率が1割か2割で、現役世代よりも安いでしょ。これって本来はおかしいんだよね。だって、高齢者のほうが金融資産を持っている割合が大きいんだもん。

だから、高齢者を一律にするんじゃなくて、基礎年金だけで生活されている高齢者は徹底的に制度で守り、資産を持っている人には年齢に関係なく、それなりに負担をしてもらう。彼らまで同じように守るのには、無理があります。

昭和のモデルはもう通用しない

――社会保険料がどんどん上がって、現役世代は本当に苦しいんです(涙)。

それに関して言うと、僕は病気になったことで自分の人生を反省し、生き方を変えたけれど、日本も、若い人たちも変わっていかないとまずい。

日本は高度成長期以降、企業が中心となって経済を回してきた。個人じゃなくてね。それでもあの当時は人口も経済も右肩上がりだったから、何とかなっていたんです。

終身雇用も、源泉徴収も、健康保険もすべて企業が中心だった結果、みんな自分のためではなく、“企業のため”に動くようになった。

ある意味、これは途上国型モデルですよ。日本は人口減少が始まって13年。成熟した国になった今、昭和の頃のモデルが通用するはずがないんです。

岸博幸 経済評論家 余命10年
岸博幸さん(撮影:今井康一)

――令和になっても、昭和モデルのまま?

そう。特に失われた30年の影響で、経済がこれだけ弱くなってしまった今、日本は企業中心の価値観を、個人中心に変えていかないとダメです。

国の成長を表す指標にGDP(国内総生産)ってあるでしょ、あれ、日本は4位に落ちたって騒いでるけど、実は一人当たりGDPは34位で、G7のなかでビリなんです。加えて、国別の幸福度ランキングも日本は47位でえらく低い。

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