日本企業にとって「労働力のポスト中国」はどこか?--円高で中国人賃金は依然として安い水準に
--なるほど、地域によって差があるようですがどうでしょうか?
日系企業が多い大連だと北京や上海より人件費は安く、3分の2くらいになります。沿海部でも差があります。日系企業にとっては、日本に近くてお得な場所です。中国を市場としてとらえて進出するかどうかで日系企業の生産拠点も変わります。
人件費の差や自治体の投資誘致によって、日系企業も少しずつ生産拠点を内陸や南部に移している傾向がありますが、輸送を考えると限界があります。消費地も輸出拠点も基本的に東部の沿海部になります。
もの凄く大雑把にいえば、企業にとっては「海に近く人件費が安いところ」が海外生産拠点の候補になります。直線距離は関係ありません。現在、注目されているベトナムがそれです。
--ベトナムはよく「ポスト中国」と呼ばれていますね?
「日本向け輸出加工型の企業」「労働集約型」などには、ベトナムが最も適しています。台湾や韓国から中国に代わり、またベトナムに代わりつつあります。この「輸出加工型」パターンは、その国に市場があるかどうかはどうでもよく、「低コストで生産して日本へ輸出できる環境」さえあれば、どこでもいいわけです。
実際に、ベトナム進出日系企業の4割が100%輸出を志向しています。このタイプの企業は、輸出インフラがあるベトナム南部ホーチミン近郊に進出することがほとんどです。「生産拠点、労働市場のポスト中国」といえます。国の小さい大きいとかは関係ありません。企業にとって目的を十分に達成できます。
--ベトナムの人件費は中国とどのくらい違うのでしょうか?
ベトナムは中国の3分の1から5分の1程度の人件費で済みます。最低賃金でいえば北京で176ドルですが、ホーチミンは80ドルです。