日本企業にとって「労働力のポスト中国」はどこか?--円高で中国人賃金は依然として安い水準に
あとはインドのとらえ方として欧州や中東向けの「輸出拠点としてのポスト・タイ」のような側面があります。特に「自動車の輸出拠点化」は急速に起きている現象で、日系だけでなく欧米勢もそうしつつあります。
タイ人と日本人は相性の良さもあって、日本企業は東南アジア最大の生産拠点としてきました。逆にいえば、ここまで肩入れしているのは日本だけともいえ、欧米勢はここまでタイを重要視していません。
自動車の産業集積が発達していますので、すぐには揺らぎませんが、長いスパンでみれば、輸出拠点としてのタイの存在はインドに代わっていく可能性もあります。実際に、これに危機感を持つタイの自動車部品メーカーがインドに進出してきたりしています。
一般的な日本企業、「低廉な労働力としてのポスト中国」はベトナムが第一選択肢ではないでしょうか。人件費が低く、まあまあ日本に近い国ということです。実際に中小企業の進出が最も急増している国です。
中国から生産移転の先陣を切っているのは繊維、食品加工、精密機器など労働集約型産業です。ある有名なジャーナリストは、「人件費が安いからとバングラデシュに進出するのは愚の骨頂」などとおっしゃっていましたが、決してそうではないんですね。どういう産業か、どういうビジネスモデルか、どういう目的で進出するかが問題です。
■ミャンマーの人件費は、日本の100分の1
労働集約型の繊維業界が、人件費の安いバングラデシュやベトナムに進出するのは当たり前のことです。インド以東のアジアでバングラデシュより人件費の安い国となると、軍政のミャンマーくらいしかありません。ちなみにミャンマーの一般工員人件費は、日本の100分の1くらいです。
進出目的によって生産拠点の進出国選びの正解は変わってきます。人件費の安いベトナムの場合は、ホーチミンから輸出しますが、中国の大連と比較すると海上輸送コストは3倍くらいになってしまいます。それでいいのかどうかは、各企業次第です。企業の考え方によって、より適したコストバランスを持つ国があります。
すがい・しんいち
1973年生まれ。法政大学英文科卒業。外資系IT企業、インド関連コンサルティング会社にて取締役として事業の立ち上げ等を経て、現在はネクストマーケット・リサーチ代表取締役。中小企業診断士。
ネクストマーケット・リサーチ
インド・バングラデシュなど南アジアの企業・金融・経済情報の提供のほか、進出支援コンサルティング、インターネット関連事業などを行っている。
http://nm-research.com
(聞き手:東洋経済HRオンライン編集長:田宮寛之 須貝氏撮影:尾形文繁)
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