NHKドラマPが語る「女性を描く作品」なぜ増えた 話題作「燕は戻ってこない」を制作した背景

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

長年にわたって醸成されてきたドラマの作り手の意識が、より表出しやすい状況に、現在のNHKはあるということだろう。そしてその問題意識はジェンダーにのみ向いているわけでもなさそうだ。

じつはこの4月と5月に放送されたNHKのドラマは、中年の男性が仮想空間で初めて恋をする『VRおじさんの初恋』や、障害のある俳優を起用するドラマの現場を描く『%(パーセント)』、高齢者を主人公にした『老害の人』など、“体制や社会情勢の恩恵を受けていない側”を描く作品が重なって放送されている。

「多様性というのが、NHKの制作の大きなキーワードのひとつにはなっています。挙げていただいたドラマやそれに類似する企画が提案されたとしても、考えるべき問題として捉えてもらえるようになったというか、突拍子もない意見・急進的な意見とされることはなくなってきました。

私はいまや中堅と言われる年次ですが、『VRおじさんの初恋』や『%(パーセント)』は私より若い局員の提案が通った例でもあります。昔以上に、色んな人たちの意見を吸い上げてドラマを作ろうという気運が高まっていることを感じます」

何かを糾弾しようとして作っているわけではない

そして、その変化を受け入れる土壌は、局内だけではなく視聴者の中にも醸成されつつあるのかもしれない。

NHKドラマプロデューサー
「ドラマで描く貧困や不妊だけでなく、思うようにならないことはたくさんある。何かしんどいな、と思う人に共感してもらえるのでは」と板垣プロデューサーは語る(編集部撮影)

「『燕は戻ってこない』は、テレビドラマとしては正直、好き嫌いが割れるかもしれないと思っていたんですが、好意的な意見をたくさんいただいていて、嬉しく思っています。

登場人物を限定的にでも肯定する声が多く、物語が他人事じゃなくなっているというか、この人たちの行く末を見届けたいという感覚になってくれているんだと思います。

『虎に翼』もチャレンジングな朝ドラですが、かなり肯定的な意見が多いですよね。もちろん、想いが強ければ、そこに反論も生まれることもあるとは思います。

ただ、少なくとも私はそうですし、他のNHKのドラマスタッフも同じだと思いますが、決して何かを糾弾しようとしてドラマを作っているわけではない。ただ、そこに問題意識があるから、ドラマとして結実しているんだと思います」

その問題意識は視聴者にも伝播し、“簡単には答えの出ない問題”を考え続けるきっかけを与えてくれている。

霜田 明寛 ライター/「チェリー」編集長

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

しもだ あきひろ / Akihiro shimoda

1985年東京都出身。国立東京学芸大学附属高校を経て早稲田大学商学部卒業。9歳でSMAPに憧れ、18歳でジャニーズJr.オーディションを受けた「元祖ジャニヲタ男子」。3冊の就活・キャリア関連の本を執筆後、ジャニーズタレントの仕事術とジャニー喜多川氏の人材育成術をまとめた4作目の著書『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)がベストセラーに。また、文化系WEBマガジン「チェリー」編集長として監督・俳優などにインタビューする。SBSラジオ(静岡放送)『IPPO』の準レギュラーや、映画イベントの司会も務めるなど、幅広くドラマ・映画・演劇といったエンターテインメントを紹介している

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事