NHKドラマPが語る「女性を描く作品」なぜ増えた 話題作「燕は戻ってこない」を制作した背景
『燕は戻ってこない』は、吉川英治文学賞・毎日芸術賞をW受賞した桐野夏生の同名小説のドラマ化だ。
派遣社員として暮らす大石理紀(以下、リキ。石橋静河)は、職場の同僚から「卵子提供」をして金を稼ごうと誘われる。実際に生殖医療エージェントで面談を受けると、「卵子提供」ではなく、さらに報酬の高い「代理出産」を持ち掛けられ、悩む。
一方、元バレエダンサーの草桶基(稲垣吾郎)とその妻・悠子(内田有紀)は不妊治療をする夫婦。エージェントを経由してリキと出会い、高額の報酬と引き換えに2人の子を産んでもらうことになる。しかし、出産までの過程で、リキとの交流や基の母・千味子(黒木瞳)の思惑に触れ、夫婦に温度差が出てくる――。
「答えの出ない問題」を描く必要性
2022年の発売当時、原作を読んだ板垣さんはすぐにドラマ化に思い至ったという。
「原作の登場人物全員が魅力的で、とても面白く読みました。そのうえで、命というのは普遍的なテーマである一方、生殖医療の進歩と問題点というのはすごく今日的なテーマだな、と。
2022年には不妊治療の保険適用範囲が広がりましたし、注目度の高いテーマです。NHKでは『なぜ“今”これを放送するのか』ということが問われるのですが、その点でも、“今”放送するべき作品だと思いました」
代理母や卵子提供・不妊治療の話など、簡単には答えの出ない問題が題材となっている。
「簡単に答えが出てしまう問題よりも、考え続けないと答えが出ない問題こそ、人間が考えなきゃいけないと思うんです。最近の世の中は、簡単に白黒つけたがったり、すぐに悪者かどうかをジャッジして糾弾したりする傾向があると感じていて、それに怖さを感じていました。
人間の命という重たいテーマを前に、『自分もこの人の立場だったらこう考えるかもしれない』と想像力を働かせるきっかけになればと思っています」
たしかに、何かを押し付けるようなドラマではない。視聴者としては、ドラマに限らず、公共放送であるNHKが何か新しい価値観を取り上げると、それが“正しい”と押し付けられてしまうのではと危惧してしまうところがある。
同作も、「生殖医療に関する新しい価値観を押し付けられるのか?」と構えて見始めたところ、それはすぐに杞憂だと気づいた。
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