日本版スマートグリッドは離島から始まる! “先進地”黒島・屋久島現地ルポ
九州電力もまんざらではない。「この実証が成功裏に終われば、各離島に対する導入を前向きに検討する」という。黒島に限らず、系統のつながっていない離島の多くは石油火力で電気を賄っており、再生可能エネルギー導入によるCO2削減メリットは大きい。また、離島の発電コストは「九州本土のざっと2倍」(九州電力)だ。原料の重油は本土からフェリーで長距離輸送され、しかも1回に運べる量も規制されている。輸送費はどうしてもかさむ。
管内に99もの離島を抱える九州電力の場合、離島事業で毎年100億円を超える赤字を計上する。原油価格が上昇傾向にある中、収益確保のメドも立たない。再生可能エネルギー発電所ならば、現状はまだコスト優位性はないものの、今後はコスト低下が見込まれる。スマートグリッドに対しては消極的な態度を取っていた電力会社だが、離島については導入を進める積極的な理由があるのだ。黒島の再生可能エネルギーシステム構築を担った富士電機の担当者も、自信を込めて予測する。「日本版スマートグリッドの普及は離島から始まるだろう」と。
黒島よりさらに徹底して“先行”している離島が、同じ鹿児島県、世界自然遺産の島、屋久島だ。
そこは鬱蒼とした山林の中。沿岸から山道を車で40分ほど登った所に、島内電力を一手に担う水力発電所の源泉、尾立ダムがある。島で最も標高の高い宮之浦岳(1936メートル)から流れる安房川流域の水を貯める。くみ上げられた水は水圧鉄管を通って300メートル急降下、発電機を勢いよく回し電気を生む。「屋久島の電力はこの流域の水力発電が中心。再生可能エネルギーがほぼ100%です」と話すのは、ここを管理する屋久島電工の田中秀秋所長だ。