もう1つの問題は費用だ。レカネマブの薬価は、1人あたり年間298万円(体重50キロの場合)と高額だ。高額療養費制度を使えば薬代は抑えられるが、それでも大きな負担であることに変わりない。
「このため、費用が高くなってしまう若年性アルツハイマー病の方には使いにくいと言わざるをえません」(岩田さん)
「猶予期間」をどう過ごすか
レカネマブを1年半投与すると半年ほど、3年間投与すると1年ほど進行を遅らせることができる。この意味をどう受け取るかというのも、人によって違うだろう。
岩田さんはこう話す。
「レカネマブがアルツハイマー病の進行を遅らせることによって、(重症になるまで)猶予時間ができる。この時間で、ご自身のやっておきたいことをしたり、その後の人生の過ごし方について家族や周囲と相談して手続きしたりしていただけたら、と思っています」
(取材・文/大西まお)
岩田 淳医師
日本認知症学会専門医、日本神経学会認定神経内科専門医、日本脳卒中学会認定脳卒中専門医、日本内科学会認定医、総合内科専門医。東京大学医学部附属病院脳神経内科「(旧)メモリークリニック」にてアルツハイマー病(AD)やレビー小体型認知症、前頭側頭葉型萎縮症等の疾患の診療を行ったのち、現在は東京都健康長寿医療センターへ赴任。専門は認知症性疾患、パーキンソン病、脊髄小脳変性症。
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