薬代は年間300万、アルツハイマー「新薬」の値打ち 発売から半年、薬が使えるのは患者の「2割弱」

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さらに、レカネマブ治療のための検査では、いずれか1つの検査しか健康保険では認められていない。

陰性だったからといって、もう一方の検査を受けてしまうと、検査代は自費になる可能性がある。すると、その後の治療もすべて自費になることがあるので、注意が必要だ。

こうした問診や検査の結果から専門医が適応と判断した場合、レカネマブを使うことができる。

レカネマブは点滴薬なので、定期的に受診する必要がある。

「2週間に1度、1時間20分くらいかけて点滴で投与していきます。初回は投与後にアレルギー反応などが起こらないかどうかを確認するため、さらに1時間程度は院内での待機が必要です」(岩田さん)

気になる副作用「ARIA」とは?

レカネマブの副作用については、次のような報告がある。最も頻度の高い副作用は、発熱や関節の痛み、吐き気などのアレルギー反応だ。

このほかに、投与から半年程度は、ARIA(アリア:Amyloid-Related Imaging Abnormalities)と呼ばれる副作用が起こることがある。

「ARIAはアミロイドβをターゲットとする治療に特有の有害事象で、脳の血管の周りに水が溜まる浮腫、脳内の微小出血や鉄の沈着の2種類があります。多くは一時的であり、日本人における頻度は4.5%と、さほど高くありません」(岩田さん)

ARIAは自覚症状のない場合が多いため、「最適使用推進ガイドライン レカネマブ(遺伝子組み換え)」では5、7、14回目の点滴前に脳MRIを撮り、確認することになっている。副作用が見つかった場合、その程度によって、治療を一時休止または中止することもあるそうだ。

レカネマブは期待されるMCIや早期アルツハイマー病の新薬ではあるが、課題もある。その1つが、「進行した場合どうするか」という問題だ。

基本的にレカネマブは進行を遅らせる薬なので、多かれ少なかれアルツハイマーが進行する。中程度まで進行した場合はレカネマブの投与をやめ、既存のほかの治療を行うことになる。

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