2011年夏ベスト経済書1位・『国家は破綻する金融危機の800年』を書いたケネス・S・ロゴフ氏に聞く--景気後退の視点でなく、金融危機としてとらえる


 米国の住宅ローンが住宅価格連動型になっていたとしよう。住宅市場が崩壊した際には、住宅ローンも住宅価格に連動して縮小し、債務者は債務不履行に陥るのを免れただろう。損を出すのは免れないが、それはいずれにせよ起こりうることだ。もちろん、こうした住宅ローンでは、住宅価格が上昇すれば上昇したうちの大きな部分が債権者側に回る。米国には、シェアド・アプリシエーション・モーゲージ(値上がり益の一部を貸手と借り手で分け合う住宅ローン)があるが、利用は極めて少ない。リスク分担型の負債契約を増やす必要がある。

--金融危機については、グローバルに見て貯蓄の額が望ましい投資の規模をはるかに上回っている、という見方があります。FRB(米連邦準備制度理事会)はドルを過剰に印刷していると考えている人もいます。一方、問題は過剰な貯蓄にあるのではなく、規制の不手際、または規制の欠如によるものととらえる見方もあります。この議論についてどう考えますか。

規制が適切に行われていたならば危機は回避できた、というのは確かにそうだ。しかし、ラインハートと私が本書の中で過去の何百もの金融危機について検討したのには、それなりの理由がある。好景気が長く続くと、規制当局が積極的な規制策を取り続けることは極めて難しくなる。規制当局は政治家や、規制対象である銀行・金融機関から目の敵にされる。好景気が続いている間は、問題を指摘するのが極めて難しい。とりわけ、問題の現実化がまだ数年先だというような場合は、なかなか問題を指摘できない。

--かつて、日本政府は銀行に対して厳しい姿勢を取っていないと批判し、そのために日本の「失われた10年」が長期化したと主張した人たちがいました。その一部が今、米国で同じ過ちを犯しています。彼らが日本と同じ誤りを繰り返しているから、今回の金融危機後の回復が遅れているのでしょうか。

1990年代に日本の政策を非難した米国の当局者たちが、自国が危機に陥ると、日本と同じ政策を採用したのは極めて皮肉なことだ。とはいえ、日本が取った政策が正しかったということにはならない。

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