生物学者が歳をとってわかった「人生の意味」 人間にとって「自我」こそ唯一無二のものである

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「人生に生きる意味などない」ということがしみじみと腑に落ちてから、私は死ぬことがあまり怖くなくなった。私は若い頃から、完膚なきまでの無神論者で宗教に魅力を感じたことは一度もない。宗教を信じる人というは、結局のところ、死ぬのが怖いのだと思う。

人間と違って動物は苦痛から逃れたいとは思うだろうが、死ぬことに恐怖を感じたりはしないだろう。動物は脳の構造からしても、人間のように確固たる自我を有していないので、そのような哲学的思考をすることはまずあり得ない。

人間が死を恐れるのは、自我がなくなるからだ。現在の脳科学によると、自我は前頭連合野に局在するらしい。この部分は他の動物と比べたときに、人間がいちばんよく発達している。

個人の内的な感覚としては、自我は自分以外の全存在と拮抗する唯一無二の実在である。死ぬということは、自分以外の存在物のほとんどが無傷のまま保たれるのに、自分にとって唯一無二の自我が喪失することを意味する。

つまり死を怖がるのは、自我の喪失を恐れているからであり、生きている人間にとっての自我とは、それほど大切なものだとも言える。

自分の生き方は「自分で決める」ことが大切

だからせめて、生きている間は自我をしっかりと大事に保っていきたいものである。そのためには、自分で自分の生き方みたいなものをしっかり決めて、それをなるべく守っていくことが大切だ。

自我を守るといっても「自分の好き勝手をしてデタラメに生きろ」ということではなく、自分で規範をつくることが重要だ。他人から与えられた規範ではなく、自分で一種の「マイルール」をつくり、それを守っていくという生き方だ。

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