利益1位の三井物産、巨額減損の住友商事と明暗 5大総合商社の2023年度決算は業界序列が変動

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伊藤忠商事も8800億円と後を追う。完全子会社化した伊藤忠テクノソリューションズや大建工業、ファミリーマートなどの非資源事業を中心に着実に利益を積み上げており、2020年度以来の1位も狙える位置につける。

一方、2023年度に利益を大きく落としたのが住友商事だ。昨年11月に連結純利益の見通しを5000億円に引き上げたものの、3864億円で着地した。ニッケル事業やミャンマーでの携帯通信事業、青果や北欧の駐車場事業で巨額の減損を出した影響が大きい。その総額は1500億円に上る。

4月に就任した上野真吾社長は会見で、「構造改革の総仕上げということで、これ(課題事業)に対処した。2024年度からの新中期経営計画に弾みをつけるための処理だ」と力を込めた。

住商「最大の懸案」は撤退も視野

なかでも890億円と最も大きな減損を出したのはマダガスカルのニッケル事業だ。ニッケルやコバルトの市況下落に加え、補助プラントの不具合などにより生産量が低迷。2023年度の持ち分損失は、一過性要因を含め1080億円に達した。

住商がアフリカ大陸の東、インド洋に浮かぶマダガスカル共和国東部のアンバトビーでニッケル鉱山の開発に乗り出したのは2005年のこと。1億2500万トン超のニッケルを掘り出し、220キロメートルに及ぶパイプラインで沿岸部の精錬所に鉱石を送る計画だった。

ニッケルはステンレスや特殊鋼、リチウムイオン電池などに欠かせない金属だ。住商は原料炭や鉄鉱石の開発では三菱商事や三井物産の後塵を拝し、非鉄金属で実績を積み上げてきた。アンバトビーは住商にとって絶好のチャンス到来だった。

カナダの資源会社などと組み、2012年に操業を開始。しかし、設備の不具合が相次いだうえにニッケル市況も低迷し、2015年度に770億円の減損損失を計上。その後も2016年度48億円、2018年度100億円と減損の計上を繰り返してきた。

そのたびに住商は「設備の改修を終え、安定生産のメドをつけた」との説明を行ってきた。それでもコロナ禍で生産がストップした2020年度に850億円もの減損を計上した。

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